歌舞伎用語。一番目狂言の略。武士や公卿等の世界を題材とした時代物の狂言のことをいう。江戸では1日の狂言は一つ,題名も一つというのがきまりで,特に元禄期(1688-1704)は全編を4場に分け,一番目,二番目,三番目,四番目としたが,全体としてまとまった筋になっていた。享保(1716-36)以後は1日の狂言を二つに分け,一番目に武士社会を扱ったものを3,4幕,二番目に町人社会を描いたものを1,2幕演じた。三番目,四番目は,後日に特に幕を継ぎ足す場合にのみ用いられた。寛政以後,並木五瓶が二番目を独立させて別の名題をつけることを始めて以来,一番目と二番目とを別々の狂言とすることも行われ,一番目を時代物,二番目を世話物というようになった。明治以後時代の変化に応じて狂言の種類が複雑になり,東京では一番目,中幕,二番目,大切(おおぎり)という,並列式の狂言立てが行われるようになった。京阪では一番目に当たる狂言を前狂言と呼んでいる。
→時代物 →二番目
執筆者:山本 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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