一銭切(読み)いっせんぎり

日本大百科全書(ニッポニカ)「一銭切」の解説

一銭切
いっせんぎり

安土(あづち)桃山時代の刑罰。織田信長や豊臣(とよとみ)秀吉が出した戦陣の禁制にみえる語で、乱暴、狼藉(ろうぜき)などを働いたは「一銭切たるべし」と定めている。その内容については江戸時代から2ある。その一つは新井白石(あらいはくせき)の説で、たとえ1すなわち1文(もん)盗んでも死刑に処することを味した、とする。その二は伊勢貞丈(いせさだたけ)の説で、「切」は限りを意味とし、料銭すなわち罰金を取り上げる場合、1文までも探して全財産を没収することと理解している。現代においてもいずれが正しいかは一定していないが、戦国時代から安土桃山時代にかけては、戦時体制のもとで厳罰主義がみられ、とくに戦陣においては規律を保つためにこのような刑罰を予告したのである。

[平松義郎]

『三浦周行著「歴代法制の公布と其公布式」(『法制史の研究』所収・1919・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典「一銭切」の解説

いっせん‐ぎり【一銭切】

〘名〙 戦国時代に行なわれた斬首刑の一つ。一銭でも盗んだ者を斬罪の厳罰に処するという意とも、あるいは切り口が緡銭(さしせん)のそれに形状が似ているからともいう。
※鹿苑日録‐天文七年(1538)一〇月一二日「一銭切と堅成敗之間、不聊爾云々」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典 第2版「一銭切」の解説

いっせんぎり【一銭切】

豊臣秀吉が配下軍隊に占領地での放火略奪などを禁じた軍令に出てくる刑名。1590年(天正18)小田原の陣のものが著名で〈濫妨狼藉は一銭ぎりたるべき事〉とある。意味については早く江戸時代から考証家の間に(1)1銭(1文)を奪っても斬首にする,(2)1銭も残さず所持品を没収する,(3)銭は千の当て字であり,一千切,すなわち細かく切り刻む意である,の3説が唱えられてきた。現在では1501年(文亀1)に九条政基が和泉国の所領に出した禁制に〈窃盗,三銭を過ぐるは(中略)切り棄つべき事〉とあることから,(1)の説が有力であるが,確証はない。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内の一銭切の言及

【盗み】より

…盗みに対しては見つけしだい打ち殺すのが,この世界でのルールであり,犯人の妻子まで縁坐として処刑されることもまれではなかった。戦国時代の法令にあらわれる一銭でも盗んだ者は死刑にするという〈一銭切(いつせんぎり)〉〈三銭切〉の語は,この在地の苛酷な慣習のもとから生まれたものである。中世日本人のこの盗みを忌み嫌う独特の観念は,盗みを一種の災い・穢れとする古い考え方に由来する。…

※「一銭切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

国民栄誉賞

内閣総理大臣表彰の一つ。1977年内閣総理大臣の福田赳夫の決裁により設けられた。「広く国民に敬愛され,社会に明るい希望を与えることに顕著な業績のあった者」に贈られる。第1回受賞者はプロ野球選手の王貞治...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android