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安土(あづち)桃山時代の刑罰。織田信長や豊臣(とよとみ)秀吉が出した戦陣の禁制にみえる語で、乱暴、狼藉(ろうぜき)などを働いた者は「一銭切たるべし」と定めている。その内容については江戸時代から2説ある。その一つは新井白石(あらいはくせき)の説で、たとえ1銭すなわち1文(もん)盗んでも死刑に処することを意味した、とする。その二は伊勢貞丈(いせさだたけ)の説で、「切」は限りを意味とし、過料銭すなわち罰金を取り上げる場合、1文までも探して全財産を没収することと理解している。現代においてもいずれが正しいかは一定していないが、戦国時代から安土桃山時代にかけては、戦時体制のもとで厳罰主義がみられ、とくに戦陣においては規律を保つためにこのような刑罰を予告したのである。
[平松義郎]
『三浦周行著「歴代法制の公布と其公布式」(『法制史の研究』所収・1919・岩波書店)』
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…盗みに対しては見つけしだい打ち殺すのが,この世界でのルールであり,犯人の妻子まで縁坐として処刑されることもまれではなかった。戦国時代の法令にあらわれる一銭でも盗んだ者は死刑にするという〈一銭切(いつせんぎり)〉〈三銭切〉の語は,この在地の苛酷な慣習のもとから生まれたものである。中世日本人のこの盗みを忌み嫌う独特の観念は,盗みを一種の災い・穢れとする古い考え方に由来する。…
※「一銭切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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