日本大百科全書(ニッポニカ)「七事式」の解説
七事式
しちじしき
茶の湯修練のための式作法。本来、心技両面の錬成を目的として制定されたもので、七つの式作法からなっている。江戸中期ともなると、茶の湯も漸次遊芸化してきた。これを憂慮し将来を案じた表千家7世如心斎(じょしんさい)が、弟の裏千家8世又玄斎一燈(ゆうげんさいいっとう)と相談し、大徳寺の大竜和尚(おしょう)、無学和尚の教えを請い、また各方面の意向もいれ、協議を重ねて決定したもの。その着想の源は闘茶(とうちゃ)にあるといわれる。また七式の由縁は、中国宋(そう)代の仏書(1125完成)『碧巌録(へきがんろく)』の「七事随身」による。その構成は、花月(かげつ)、且座(さざ)、廻(まわ)り炭(ずみ)、廻り花、茶かぶき、一二三(ひふみ)、員茶(かずちゃ)の七つであるが、このうちの廻り炭は炉の季節で、他は無季。風炉(ふろ)は廻り炭のかわりに花寄せがある。七つの式のそれぞれには精神的な裏づけがあり、禅語で一つ一つ端的に要約されている。
花月 互換機鋒看子細
且座 是法住法位
廻り炭 端的底看聻
廻り花 色即是空凝思量即背
茶かぶき 于古于今截断舌頭始可知真味
一二三 修証即不無染汚不得
員茶 老倒疎慵無事日 閑眠高臥対青山
数人が一組になって楽しみながら修養を積むというこの七事式が確立したことによって、両千家に茶道修練上の一つの新機軸が開かれたといえる。
[筒井紘一]