万葉考(読み)まんようこう

精選版 日本国語大辞典 「万葉考」の意味・読み・例文・類語

まんようこう マンエフカウ【万葉考】

江戸中期の、「万葉集」の注釈書。一〇冊。賀茂真淵著。巻一、二および別記の三冊は宝暦一〇年(一七六〇脱稿明和六年(一七六九)刊。全巻の刊行終了は天保六年(一八三五)。「万葉集」の時代区分、作家評などを総論し、巻一、二、一一~一四の六巻に注釈を施したもの(他の一四巻の分は、真淵没後に草稿本をもと狛諸成がまとめたもの)。独創的な歌評、上記六巻を「万葉集」の原形とする説、「万葉集」の本質を「ますらおぶり」として捉える見方など、以後の「万葉集」研究に大きな影響を与えた。万葉集考

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デジタル大辞泉 「万葉考」の意味・読み・例文・類語

まんようこう〔マンエフカウ〕【万葉考】

江戸後期の万葉集の注釈書。10冊。賀茂真淵かものまぶち著。明和5~天保6年(1768~1835)刊。総論で万葉集の時代区分・歌人などを論じ、巻1・2・11・12・13・14の6巻を万葉集の原形として、これに注釈を施したもの。他の14巻については、のちに真淵の草稿本をもとに狛諸成こまもろなり完成。万葉集考。

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改訂新版 世界大百科事典 「万葉考」の意味・わかりやすい解説

万葉考 (まんようこう)

注釈書。賀茂真淵の著。1768年(明和5)成立。20巻。巻一から巻六までが,真淵の書いたものであり,巻七以下は真淵の説を基に狛諸成(こまもろなり)が編集したもの。真淵の執筆したのは,《万葉集》の巻一,巻二,巻十三,巻十一,巻十二,巻十四についてであり,真淵はその巻と巻序を《万葉集》の原型と考えている。総論の〈万葉集大考〉において,歌風の変遷,歌の調(しらべ),主要な歌人について論じているが,《万葉集》の文学享受を一新し,近代以後まで大きな影響を及ぼしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「万葉考」の意味・わかりやすい解説

万葉考
まんようこう

江戸時代の『万葉集』注釈書。賀茂真淵(かもまぶち)の著。20巻。「五意(ごい)考」の一つ。真淵は通行本『万葉集』の巻1、巻2、巻13、巻11、巻12、巻14を順次に巻1から巻六にあて、この六巻を『万葉集』の原形としたが、巻1、巻2の注釈と別記をあわせた三巻は、真淵の生前、1769年(明和6)までに刊了した。巻三から巻六までの注釈と別記、『人麻呂(ひとまろ)集』を加えて、10巻10冊の『万葉考』が刊了をみたのは1835年(天保6)である。『万葉考』巻七以下は狛諸成(こまのもろなり)らが追補を加え、写本として伝わり、明治になって真淵全集に収められた。『万葉考』は批評意識に支えられ、独創性に富んだ注釈書として、万葉研究史上に画期的な意義をもつ。

[井上 豊]

『『賀茂真淵全集1・2』(1977・続群書類従完成会)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「万葉考」の解説

万葉考
まんようこう

「万葉集考」とも。「万葉集」の注釈書。20巻・別記6巻・人麻呂集1巻。賀茂真淵(まぶち)著。巻1・2は1769年(明和6)刊。巻3・4は1825年(文政8)刊。巻5・6は35年(天保6)刊。独自の見解で巻序を改め,かなり重要な部分が主観的な判断によって規定される。万葉注釈史上大きく貢献し,多大な影響を与えた。「賀茂真淵全集」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「万葉考」の解説

万葉考
まんようこう

江戸中期,賀茂真淵 (まぶち) の『万葉集』注釈書
万葉集考ともいう。1760年刊。20巻・別記6巻・他1巻,24冊。総論において『万葉集』の評論をし,ついで集中より6巻を選び本文の批評と注釈を施した。独創的見解が多く,近世の『万葉集』研究の先駆をなす。

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