上演権(読み)ジョウエンケン(英語表記)right of presentation

デジタル大辞泉 「上演権」の意味・読み・例文・類語

じょうえん‐けん〔ジヤウエン‐〕【上演権】

著作権に含まれる権利一つ戯曲などの著作物公衆に直接見せたり聞かせたりすることを目的として上演する権利。

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改訂新版 世界大百科事典 「上演権」の意味・わかりやすい解説

上演権 (じょうえんけん)
right of presentation

文芸作品などの著作権に含まれる権利の一つ。脚本など演劇著作物を〈公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として〉(著作権法第22条),舞台,映画,放送などで演出・上演する権利をいう(通称興行権〉ということもある)。楽譜など音楽著作物を演奏する演奏権とともに規定されており,演劇著作物を演技によって公に表現・上演する行為を規制し,著作者(脚色者を含む脚本作者)の権利を保護している。したがって演劇著作物の上演に際しては,著作権者(多くは脚本作者)に対して上演料(脚本料)を支払わなければならない。著作権には脚色・戯曲化,翻案,映画化,放送化,翻訳などの改作権が含まれるから,作者(著作権者)の同意なしには改作上演することは許されない。昔は日本でも外国でも座付作者が一座に作品を提供していたから,上演権,上演料は問題にならなかった。日本で上演権を初めて成立させたのは,幕末から明治に活躍した歌舞伎狂言作者河竹黙阿弥といわれるが,実際に外部の作家に正式に上演料が支払われたのは,初世市川左団次のために処女戯曲《悪源太》(1899明治座初演)を書いた西欧帰りの劇作家松居松翁(しようおう)(松葉(しようよう)。1870-1933)が最初といわれる。日本で上演権が初めて法的に保護されたのは1887年(明治20),勅令第78号〈脚本楽譜条例〉であり,99年に旧〈著作権法〉が公布されて確立された。その後マス・メディアの発達によって改正の必要が生じ,1971年全面的に改められた新〈著作権法〉が施行された。著作権は1886年のベルヌ条約以来国際的にも保護されているが,日本でも現行法によって,上演権保護期間が著作者生存期間および死後50年(旧法では30年)にまで延長され,国際的保護水準に達した。世界で初めて上演権を主張し,確立させたのは《フィガロの結婚》などで知られる18世紀フランスの劇作家ボーマルシェである。それまでは劇作家と俳優劇団)とのあいだにいざこざが絶えなかったが,1777年彼は世界に先駆けて〈劇作家協会〉を創設し,80年には上演権(上演料受領の権利)が国王ルイ16世によって正式に認可された。現在,具体的な上演料は作家の地位,入場者数,劇団のランクなどを勘案しながら個々に契約で決められ,興行者側から支払われるのが普通である。
著作権
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世界大百科事典(旧版)内の上演権の言及

【著作権】より

… 著作権が著作物の利用から生ずる経済的な利益を保護するものであるとすれば,著作権の内容も,著作物のさまざまな利用形態に対応したものになる。こうして著作権法は,著作権の内容をなす権利として,複製権(21条),上演権および演奏権(22条),公衆送信権(放送権,有線放送権を含む)(23条1項),伝達権(23条2項),口述権(24条),展示権(25条),上映権および頒布権(26条),貸与権(26条の2),翻訳権,編曲権,変形権,翻案権(27条),二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)を列挙している。 日本では著作権の内容を定めるのに〈列挙主義〉を採用しているのに対して1965年のドイツの著作権法は,それまでの〈列挙主義〉を廃し,〈例示主義〉に切り換えた。…

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