長野県上田地方、更科(さらしな)、小県(ちいさがた)、埴科(はにしな)地方、とくに千曲(ちくま)川上流地帯でつくられる紬織物で、上田を集散地としたため上田紬と称する。歴史的には古く寛文(かんぶん)年間(1661~73)に伝えられ、江戸中期ごろから和糸生産の発展につれ、養蚕から生じる屑繭(くずまゆ)、玉繭(たままゆ)を利用し、農家の副業として盛んになり、最盛期は天保(てんぽう)年間(1830~44)で、のち松代(まつしろ)藩が上田産物会所(さんぶつかいしょ)を設けて発展を図った。『万金産業袋(ばんきんすぎわいぶくろ)』には「そのむかし上田より出たるは、たて横紬にて至極(しごく)つよし」とあるように、じょうぶな紬としての代表であった。繊維材料は、もと玉糸を使ったが、現在では経糸(たていと)に生糸、緯糸(よこいと)に紬糸(多くは機械を使用する)を使い、一部に高機(たかばた)による手織りもあるが、力織機によるものが多くなっている。柄は縞(しま)が多く、絣(かすり)も織られているが、普段着向きの着尺地として使用される。
[角山幸洋]
…長野県全域10市17町村で生産される手織紬をいい,伝統的工芸品指定品。山繭紬(野蚕紬),上田紬,飯田紬,伊那紬,絁紬(あしつむぎ),絓紬(しけつむぎ),ふとり紬などがある。上田紬は17世紀後半から織りはじめられ,上田縞として知られていた。…
※「上田紬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」