絹紬(読み)ケンチュウ

デジタル大辞泉 「絹紬」の意味・読み・例文・類語

けん‐ちゅう〔‐チウ〕【絹×紬/繭×紬】

柞蚕糸さくさんしで織った薄地の平織物淡褐色を帯びて節がある。布団洋傘衣服などに用いる。けんちゅうつむぎ

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精選版 日本国語大辞典 「絹紬」の意味・読み・例文・類語

けん‐ちゅう‥チウ【絹紬・繭紬】

  1. 〘 名詞 〙 柞蚕(さくさん)の糸で織った一種の紬(つむぎ)。淡褐色を帯びて節がある。中国山東省名産で、日本では蒲団兵児帯(へこおび)、洋傘、衣服などに多く用いられた。けんちゅうつむぎ。
    1. [初出の実例]「広東省〈略〉広東省土産 白糸 広州、所々〈略〉絹紬(ケンチウ)同、高州」(出典:増補華夷通商考(1708)二)
    2. [その他の文献]〔寄園寄所寄〕

きぬ‐つむぎ【絹紬】

  1. 〘 名詞 〙 絹織物の一種。柞蚕(さくさん)紡糸または絹紡糸原料として織ったつむぎ。福井県岐阜県などで産する。
    1. [初出の実例]「此質屋も分限に成て身のむかしをわすれ、いつとなく絹紬(キヌツムギ)不断着にして」(出典:浮世草子西鶴織留(1694)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬 (けんちゅう)

柞蚕(さくさん)生糸を経緯糸に使用して織り,精練漂白後,生デンプンの糊付仕上げをしたもの。ポンジーpongeeとも呼ぶ。平織で大幅と小幅がある。原色は淡黄茶色で,漂白するとクリーム色になる。薄地の普通品を絹紬と呼び,地の厚めの上級品は絹緞(けんどん)と呼ばれる。中国の山東省,河南省や,遼寧省の安東が集産地で,中国では織放しのものを繭紬,精練したものを練紬と分ける。日中戦争以前は柞蚕生糸を満州および山東省から輸入して織り,国内向けと対米輸出が盛んに行われた。まれに柞蚕絹紡糸を緯糸(よこいと)に,また,経緯ともに使ったものもある。絹織物としては安価でじょうぶであるが,染めにくいため原色で多く使われる。裏地,夜具地,洋装地に利用する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬
けんちゅう

柞蚕糸(さくさんし)を使い、平織にした薄地の織物で、ポンジーpongeeともいう。中国の山東(さんとう)地方でとれる野生繭から引いた糸で、家蚕の繭から引いた生糸に比べて、光沢が少なく、また漂白がしにくいのが欠点であるが、屋外飼育で手数がかからず、比較的収量も多いので、よく使われた。

 日本では、もと中国から柞蚕糸を輸入していたが、いまは長野県松本市付近で飼育され、紬(つむぎ)糸にして織物の緯糸(よこいと)として使われるにすぎない。従来、ふとん裏地や兵児(へこ)帯に用いられたが、いまは素朴な味が好まれ、夏服地、着尺地に使われる。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬【けんちゅう】

野蚕絹の柞蚕(さくさん)糸を用いて平織にした織物。ポンジーともいう。特有の光沢があり,淡黄色で,布面に節(ふし)が現れている。張りがあって丈夫なので裏地,夜具地などにする。中国山東省産が知られるが,日本でも長野県有明地方,岐阜県郡上(ぐじょう)八幡などで少量作られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬
けんちゅう

繭紬とも書く。サクサン (柞蚕) の繭からとった糸で織った平織物。淡褐色で節がある。じょうぶなので,ふとん地,裏地,傘地などに用いられる。中国の山東省が多産地。

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普及版 字通 「絹紬」の読み・字形・画数・意味

【絹紬】けんちゆう

つむぎ。

字通「絹」の項目を見る

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