世間妾形気(読み)せけんてかけかたぎ

精選版 日本国語大辞典 「世間妾形気」の意味・読み・例文・類語

せけんてかけかたぎ【世間妾形気】

浮世草子気質物。四巻。和氏訳太郎(上田秋成)作。明和四年(一七六七)刊。気質物浮世草子の流れを継承し、妾の生態を描いた作品中心とした一二話の短編集。秋成才能をうかがうにたる文体、皮肉な観照などにより、末期浮世草子中の佳作と評される。

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改訂新版 世界大百科事典 「世間妾形気」の意味・わかりやすい解説

世間妾形気 (せけんてかけかたぎ)

浮世草子。和訳太郎上田秋成)作。1767年(明和4)刊。4巻。《諸道聴耳世間猿》に次ぐ2作目。八文字屋本以来の気質物(かたぎもの)の形式をうけたもので12話より成る。全体を妾の上に展開しているが,妾とは遊女でもなく地女(じおんな)でもないために,どことなくいかがわしい存在である。妾が性愛を唯一の売物にする以上,そこには騙り(かたり)しかてだてがない。酔のまぎれに雑掌と通ずる妾,浦島伝説の女パロディ,月がかりの女,妾の姦通への報復譚,僧侶相手の美人局(つつもたせ),江戸屋敷の部屋めぐりの女,信田妻の逆用や,小野小町零落譚のパロディもあるが,中には巻三の2・3のように《雨月物語》の〈浅茅が宿〉に通ずる短編もある。
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