諸道聴耳世間猿(読み)しょどうききみみせけんざる

精選版 日本国語大辞典 「諸道聴耳世間猿」の意味・読み・例文・類語

しょどうききみみせけんざるシヨダウ‥【諸道聴耳世間猿】

  1. 浮世草子五巻和訳太郎上田秋成)作。明和三年(一七六六)刊。気質物。浮世草子の系統をつぎ、特異な人物性格奇談の中で拡大しつつ、風刺的に描く一五話からなる。「雨月物語」以前の秋成の独特な才気がうかがわれ、末期浮世草子中の佳作

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改訂新版 世界大百科事典 「諸道聴耳世間猿」の意味・わかりやすい解説

諸道聴耳世間猿 (しょどうききみみせけんざる)

浮世草子。1766年(明和3)刊。5巻。上田秋成の処女作であるが,和訳太郎の戯名で発表。気質物(かたぎもの)の形式をうけ,15話より成る。当時の京坂の各方面に対する作者の見聞を材料として,これを特殊な性格の人物に戯画化し,失敗しかつしぶとく生きる様を,皮肉な筆致で描破している。兵法家,神道者,道具目利,相撲取,信心者,能楽師,女武道,軽業口上師,芸妓祈禱師など諸芸諸道の徒を題材としたものが多いが,その書き方は在来の気質物とまったく異質で,〈のらもの〉的発想や荒唐世説(とりじめもなきよそごと)を生かしている。正統と異端,価値的なものと反価値的なもの,真性疑似善悪の変換などが,重要な特徴となる。詐術を一種の生活の知恵とし,騙(かた)ることを生活に変化あらしめる工夫としながら,封建社会の閉鎖的現実を巧みに生きぬいてゆく人物像を描いた傑作
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