中華人民共和国とソビエト社会主義共和国連邦との間の友好、同盟および相互援助に関する条約。本条約および二つの付属協定、交換公文からなる。1950年2月14日モスクワで調印、4月11日発効。中華民国とソ連との間に1945年8月14日に結ばれた中ソ友好同盟条約を多くの面で継承している。この条約締結のために、毛沢東(もうたくとう/マオツォートン)主席は建国直後の多忙な最中、1949年12月中旬から2か月にわたってソ連に滞在し、その間、周恩来(しゅうおんらい/チョウエンライ)首相もモスクワによばれるなど、スターリンとの交渉は困難を極めた。のちに毛沢東は、この協定によって中国の東北地方を自国の植民地にしようとしたと、ソ連を非難した。
本条約は前文と6か条からなり、日本および日本に同盟する国の侵略を共同で阻止する(第1条)、対日全面講和の促進(第2条)、相手国に反対する同盟・集団行動・措置への不参加(第3条)、重要な国際問題の協議(第4条)、経済・文化協力の強化(第5条)、条約の有効期間30年(第6条)などを規定している。付属協定では、中ソ共同管理の中国長春鉄道、旅順(りょじゅん/リュイシュン)・大連(だいれん/ターリエン)の海運基地の早期返還、および3億ドルの対中国経済援助を約束している。交換公文は、旧条約の失効、モンゴルの独立の再確認を明記している。
本条約は1950年代の冷戦時代には中ソ社会主義陣営のシンボルとみられていた。60年代以後、中ソ対立の激化とともに本条約は有名無実化していき、日中平和友好条約交渉の過程で本条約の第1条の対日条項が問題となったが、中国側は79年4月3日に、80年4月11日の満期後は同条約を延期する意志のないことをソ連に通告した。ソ連政府はこの措置を「敵対的行為」と非難したが、同条約の失効後、両国間で関係改善の交渉が進められ、89年5月のソ連のゴルバチョフ書記長の北京(ペキン)訪問(10日後、最高会議議長に就任)によって、両国の国家関係、党関係ともに正常化した。ソ連崩壊後、中国とロシアの友好関係は回復され、96年4月のエリツィン大統領の訪中では、21世紀に向けての中ロ関係を「戦略的協調パートナーシップ」と位置づける共同声明に調印した。
[安藤正士]
中華人民共和国の建国早々,毛沢東主席は主席初の外国訪問として,1949年12月21日モスクワで開催予定の,スターリン首相70年誕生祝賀宴に参加のため12月16日訪ソ,その後スターリン首相と中ソ両国の友好団結について,年越しの長期会談に入った。翌50年1月には中国の周恩来首相も会談に加わり,50年2月14日ようやく,毛沢東,スターリン両首脳立会いの下に,期限30ヵ年,全文6ヵ条から成る〈中ソ友好同盟相互援助条約〉の調印がおこなわれた。この条約は,4年前の45年8月14日日本の降伏直前,ソ連と中国(蔣介石政権)の間に締結された〈中ソ友好同盟条約〉を改定,継承したもので,旧条約と同様に第1条で,日本あるいは日本と結びついた外国によって,中ソいずれかの国が侵略を受けた場合,相互に〈全力をあげて軍事その他の援助を与えること〉を約している。また条約とともに,中国長春鉄道(旧,満鉄),旧条約以来ソ連が租借していた旅順,大連の返還,ソ連の対中経済援助などの諸協定が結ばれた。なお新条約は期限満了の80年4月10日,中国側の通告によって自動失効した。
執筆者:蠟山 芳郎
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1950年2月に調印された中ソ間の同盟・相互援助条約。49年12月に訪ソした毛沢東とスターリンとの会談にもとづき,周恩来とヴイシンスキーとの交渉をへて調印され,50年4月に発効した。6カ条からなるが,「両国の善隣友好関係の強化」をうたいつつ,日本およびアメリカの脅威に対抗するという目的を持ち,軍事的な相互援助を明示した攻守同盟条約であった。同時に調印された中国東北地方に関する協定,借款供与協定とともに,中国は安全保障と経済援助を確保したが,秘密補充協定によってソ連は中国東北地方や新疆(しんきょう)から第三国の勢力を排除するという目的を果たした。60年代以降の中ソ関係悪化によって有名無実化し,79年中国側が再延長しないと通告したことによって終了した。
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