翻訳|neutrino
ニュートリノともいう。レプトンの一種。ふつうνで表す。歴史的にはβ崩壊の際のエネルギー保存則を説明するために導入された。すなわち,β崩壊に際して出てくる電子が連続スペクトルをもつという事実からはエネルギー保存則が成立していないようにみえるが,1930年W.パウリは電気的に中性で質量が0,もしくは電子に比べてはるかに小さい粒子が電子とともに放出されるとすれば,エネルギーの保存則が成立することを指摘し,中性微子の存在を理論的に予言した。実験的には53年原子炉における陽子との反応において観測されたのが最初とされている。その後中性微子にはβ崩壊の際に電子とともに現れるもの以外にも,π中間子の崩壊に際してμ粒子とともに現れるものの2種類があることが判明し(1962),前者を電子ニュートリノνe,後者をμニュートリノと呼ぶ。現在ではさらにντ(τ粒子に対応するニュートリノ)も発見され,第4の中性微子の存在の可能性も議論されている。これらの中性微子の質量が完全に0なのか,あるいはきわめて小さいが有限の値をもつのかは重大な問題で,現在に至るまで未解決の問題である。宇宙論的にもヘリウム合成や星のエネルギー放出機構,ミシングマスmissing massの存在などに関連して中性微子の種類や質量が問題になる。
→素粒子
執筆者:菅原 寛孝
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…このように物理学が対象とした万物が原子からなり,その原子がすべてこの3種類の小さな粒子(陽子,中性子,電子)でできているとすれば,これらの小さな粒子こそ,もっとも基本的なものであり,このためこれらの粒子は自然を構成する素元的な粒子という意味で〈素粒子〉と呼ばれるに至ったのである。第2次世界大戦前までに,この3種類の粒子のほかにも,光子(フォトン),中性微子(ニュートリノ),電子の反粒子である陽電子などが素粒子の仲間に加えられ,素粒子の種類も増えていったのであるが,素粒子の存在が明らかになったことでミクロの世界の探究は一段落し,素粒子がミクロの世界の主役となった。 第2次大戦後は宇宙線研究の進歩や加速器の発達もあって続々と新しい素粒子が発見され,現在ではその数は何百にも達している。…
…原子核の放射性崩壊の一種で,放射性同位体が電子e-(あるいは陽電子e+)と反中性微子ν-e(あるいは中性微子νe)とを放出し,質量数は同じであるが原子番号Zの一つだけ異なる核に変化する過程。このとき放出される電子の流れをβ線という。…
※「中性微子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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