朝日日本歴史人物事典 「中村大吉」の解説
中村大吉(初代)
生年:安永2(1773)
江戸中期,上方の歌舞伎役者。屋号天王寺屋,鳴尾屋。俳名巴丈。藤川友吉・2代目中村のしほの門弟。藤川大吉などの名で大坂の中芝居を勤め,中村大吉と改めて寛政12(1800)年江戸の森田座が大芝居の初舞台。三都で活躍し,死の前年には一世一代(引退興行)を勤めて若女形真上上吉に位付けされた。器量に恵まれ,口跡はあざやか,位のある気丈な芸ぶりで,とりわけ所作事,武道事が得意であった。愁い事もよくしたが表情こなしとも和らかみが足りず,娘役,傾城役よりも世話女房,女武道にすぐれ,丸本物(義太夫狂言)を本領とした。なお,役に応じた衣裳や鬘を工夫している。名跡は幕末期の4代まである。
(上野典子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報