主権平等の原則(読み)しゅけんびょうどうのげんそく(英語表記)principle of sovereign equality

日本大百科全書(ニッポニカ) 「主権平等の原則」の意味・わかりやすい解説

主権平等の原則
しゅけんびょうどうのげんそく
principle of sovereign equality

国家主権地位において平等であること。国家の基本権としての主権と平等権の複合概念であるが、普通は平等権に重点を置いて説かれる。国家平等権は、(1)法の前の平等、すなわち法の適用における平等、(2)実質的平等、すなわち法内容における平等、(3)形式的平等、すなわち法定立における平等、と三つの側面を有する。しかし、伝統的国際法が力の政策を容認する限り、平等権は確固たる基礎にたつものではなかった。法の前の平等は国際法の妥当が肯定される限り当然の要請であるが、執行面に限界があった。実質的平等は、不平等条約も有効なものとされたように、権利として確立していたかどうか疑わしい。形式的平等は一般に認められていたといってよい。しかし、国際組織においては、分担金、利害関係度、責任負担能力を基準に代表、投票の面で差等を設け、有力国が優位にたつことも少なくなく、これを機能的平等または相対的平等という視点から正当化した。

 今日では力の政策が否認されるようになり、主権平等平和共存観点から見直されている。国連憲章によれば、国際連合は加盟国の主権平等を基礎として組織される(2条1項)が、この「主権平等」の意味について、1970年第25回国連総会が採択した「国際連合憲章に従った国家間の友好関係及び協力についての国際法に関する宣言」(諸国間友好関係宣言)は、(1)国家は法律上平等であり、(2)各国は主権に内在する諸権利を享有し、(3)各国はその政治的、社会的、経済的および文化的諸権利を自由に選択し、発展させる権利を有する反面、(4)国家の人格は尊重され、(5)領土保全および政治的独立の侵害は禁止され、(6)国家は国際秩序の下に国際義務を遵守し、相互に平和に生存する義務を負う旨を定めている。主権平等はまた発展途上国との関連で新たな展開がみられる。伝統的平等権が、主権国なるがゆえに平等であるというように抽象的な国家を前提していたのに対し、途上国は、発展の不平等を担う具体的な国家を前提し、主権の名において南北の格差是正を要求すべく、すべての国が経済的意思決定過程に完全かつ平等に参加し、そこから利益を衡平に享有するという、新しいタイプの実質的平等権を提起している(1974年国連総会が採択した「国家の経済権利義務憲章」10条)。

[内田久司]

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世界大百科事典(旧版)内の主権平等の原則の言及

【主権】より

…一方,前者を指示するのは彼が第2にあげた戦争と平和との権限であって,中世的な普遍的権威による正しい戦争の観念を打ち破って,戦争と平和とを君主の利害判断のみにかかわらせることによって,主権をいわば戦争する権利としたのである。その発動は国力によって実質的には拘束を受けるにしても,法的にはひとしく君主の自由である点で,近代国際法における主権平等の原則が生まれたのである。他国の領域内では公権力の行使をさしひかえる主権不可侵の原則はここに由来し,その相互承認のうえに,近代における主権国家とその間の国際関係とが成立したのである。…

※「主権平等の原則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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