日本大百科全書(ニッポニカ) 「事業分離会計」の意味・わかりやすい解説
事業分離会計
じぎょうぶんりかいけい
accounting for business division
2005年(平成17)12月27日に企業会計基準委員会(ASBJ)により公表された企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」によって実施される会計。
事業分離とは、この会計基準によれば、ある企業(会社および会社に準ずる事業体、以下同じ)を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む)に移転することをいう。このような事業分離は、企業再編の一形態になるものかその一部を構成するもので、一般的には、会社分割や事業(営業)譲渡、現物出資、事後設立などの形態をとるものである。
企業再編に際しての事業分離の当事者には、事業を分離する側の企業(分離企業もしくは分離元企業)と、分離先の企業とがあり、それぞれの株主(結合当時者企業の株主)がいる。会計としては、これらのおのおのに関して、適正な会計基準が必要とされてきた。
もともと、事業分離等の会計は、前記基準の制定に先んじて2003年10月31日、企業会計審議会が公表した「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」により、企業結合側の会計処理について持分プーリング法とパーチェス法の会計のあり方を整理したことに始まる。これを起点として、適用に関するさらに具体的な考え方・会計処理は、ASBJの基準化にゆだねていたところである。
ASBJは、企業結合に関する全体の検討過程において、とくに資産の現物出資等における移転元の企業の会計処理(分離元企業の会計)と結合当時者企業の株主にかかる会計処理を中心に事業分離等会計基準を制定したのである。
分離元企業の会計では、移転した事業に関する投資が継続しているとみなされる場合には、移転した事業の帳簿価格を引き継ぎその事業にかかる損益を認識しないが、移転した事業に関する投資が清算されたとみなされる場合には、受領した対価の時価と事業の帳簿価格の差額を移転損益として認識するものとして整理している。
なお、事業分離等会計基準の公表にあたっては、同時に、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」が公表されている。
企業結合会計基準と事業分離等会計基準とは、互いに補完の位置づけを維持しながら、2006年4月1日に開始する事業年度から適用することとされた。
[東海幹夫]