株式の対価として金銭以外の財産をもってする出資(会社法28条1号)。株式会社では金銭出資を原則とするが、会社にとって必要な財産をあらかじめ確保する必要上、例外的に認められた制度である。たとえば個人企業の法人成り(節税や有限責任のメリットを享受するなどの目的から個人企業が法人格を取得して法人となること)の場合に、従来の営業をそのまま現物出資して株式会社を設立するなどにみられる。たとえば、食料品販売業を営む個人企業であるAが、食料品販売業の営業(店舗、ノウハウ、得意先関係など一定の営業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産)を現物出資して、A株式会社を設立する場合などである。しかし、現物出資の目的物を過大評価して過当な株式を出資者に与えると、他の金銭出資者との公平を害し、資本充実の原則に反する。そのため会社法は、株式会社においては設立の際に現物出資をなしうるのは発起人に限るとし、さらに変態設立事項として、定款に現物出資者、出資の目的たる財産、その価格、それに対して与えられる株式数などを記載させ(会社法28条1号)、検査役の検査を要するものとしている(同法33条、46条1項1号・2号、87条2項、93条1項1号・2号)。なお、募集株式発行の場合にも現物出資規制が存在するが、すでに会社が成立し、資本が充実している後における現物出資なので、設立時に比べて規制は若干緩い(同法208条)。
[戸田修三・福原紀彦]
『村田英幸著『現物出資等の財産価格証明の理論と実務――会社法版』(2007・花伝社、共栄書房発売)』
金銭以外の財産をもってする出資。社員が会社に対する有限の出資義務を負担するにとどまる株式会社,有限会社の場合には,金銭出資を原則とするが,会社が特定の財産を確保することが必要もしくは有益であり,または,会社にとって不利益でないかぎり出資の便宜をはかりうる等の理由から,例外として現物出資も認められる。その目的となりうる財産は,移転可能で客観的に評価可能なものでなければならないが,このようなものであれば,動産,不動産,債権,有価証券,無体財産権,営業の全部または一部等のほか,営業上の秘訣,得意先,のれん等の財産的価値のある事実関係でもよい。金銭以外の財産については,過大評価により会社の財産的基礎を害し,会社債権者と金銭出資者の利益を害し,現物出資者に不当な利益をもたらすおそれがあるため,現物出資は商法・有限会社法により厳格な規制を受け,株式会社設立の場合には,発起人に限って認められる(商法168条2項)。個人企業の法人成り(法人格を取得し法人になること)には,営業の現物出資が合理的な方法である。
執筆者:平出 慶道
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…そこで株主に新株引受権を与えないで,しかも時価より低い発行価額で(もっとも,時価より10%程度低い価額までは許されると解されており,現に時価発行では数%のディスカウントが行われている)新株を発行する場合には,そのような価額で新株を発行することを必要とする理由を示して,株主総会の特別決議がなければならないものとされている(280条ノ2‐2項)。株式の発行の対価としては,金銭を払い込ませる場合(この場合のことを金銭出資という)のほかに,金銭以外の現物を給付させる場合(この場合のことを現物出資という)があり,後者の場合には,現物の過大評価がなされていないかどうかにつき原則として裁判所の選任する検査役による調査がある。
[株式の譲渡]
株式は,相続・合併等によって移転するほかに,その譲渡によって移転される。…
※「現物出資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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