日本大百科全書(ニッポニカ) 「企業結合会計」の意味・わかりやすい解説
企業結合会計
きぎょうけつごうかいけい
会社の合併や買収といった事業再編のための会計手続。企業結合とは、ある会社と他の会社が一つの事業単位に統合されることである。具体的には会社の合併や株式交換による子会社化がこれにあたる。
企業結合に関する日本で初めての包括的な会計基準が、2003年(平成15)に設定された「企業結合に係る会計基準」である。それまでは、商法や税法の規定の範囲内で、企業結合の実質とはかならずしも整合しない多様な会計処理が行われていた。企業結合会計では、企業結合の経済的実質が大きく「企業買収(取得)」と「持分の結合」に分けられ、前者には「パーチェス法」、後者には「持分プーリング法」とよばれる会計処理方法が適用される。
企業買収に該当するのは、結合当事企業のどちらかが結合後の企業を支配するケースである。現金や株式交換によって他社の株式を取得して子会社化するのがその代表例である。この場合に適用されるパーチェス法では、通常の資産の購入と同様に、取得企業は被取得企業の資産および負債を時価評価して引き継ぐ。取得の対価として株式を発行したときは、交付した株式の時価総額だけ取得企業の資本を増加させる。資産および負債の正味受入価額(純資産の時価総額)と買収対価の合計(取得原価)に差があれば、その差額は「のれん」として認識される。
これに対し持分の結合は、統合されるどちらの企業の株主も、他方の企業を支配したとは認められないケースである。日本で「対等合併」という名目で行われる企業結合がその代表例である。持分の結合とは、結合前の企業の株主持分がそのまま結合後の企業に継承され、株主は結合後の企業のリスクと便益を引き続き共有するという意味である。そのため、持分の結合とされるためには、結合する企業間で株式と株式の交換が行われることが条件となる。この場合に適用される持分プーリング法では、結合当事会社の資産・負債・資本が結合前の帳簿価額でそのまま引き継がれる。このため、持分プーリング法ではのれんが発生しない。なお、国際会計基準にあわせるため改正された新しい企業結合会計基準では、この持分プーリング法は2010年4月以後の取引から廃止されることになっている。
[濱本道正]
『齋藤雅子著『企業連結会計の論点――持分プーリング法容認を考える』(2008・中央経済社)』▽『関根愛子著『企業結合会計の知識』(日経文庫)』