壺井栄(つぼいさかえ)の長編小説。1952年(昭和27)2月から11月までキリスト教系の青年雑誌『ニュー・エイジ』に連載、同年12月に光文社から刊行。瀬戸内海の小豆島(しょうどしま)に生まれた大石先生が新卒の女教師として島の岬の小学校に赴任、そこで受け持った12人の子どもをかわいがる。しかし、第二次世界大戦の嵐(あらし)はこの小さな島の子どもたちをも巻き込み、ある少女は紅灯の巷(ちまた)へ、ある少年は戦場へと行ってしまい、戦争が終わったときには大石先生も子持ちの未亡人となっていた。戦争に対する抗議に裏打ちされた、子どもにも大人にも読まれる家庭小説の秀作。1954年に木下恵介(けいすけ)監督・高峰秀子主演で映画化された。舞台となった小豆島の土庄(とのしょう)港には主人公たちのブロンズ像が建てられている。
[上笙一郎]
日本映画。1954年(昭和29)、木下恵介監督。原作は壺井栄。小豆島の小学校教師に赴任した久子(高峰秀子)は、12人の子どもの担任になる。子どもたちの信頼を得る久子だが、戦争は人命を尊重する彼女の考え方を圧迫していく。久子の夫は戦死し、戦後には娘が亡くなる。そしてかつての教え子のなかには病死、戦死、失明した者がいた。戦後の日本映画界でもっとも活躍した監督の一人である木下の代表作。木下には実験的な作品も少なくないが、本作はある女性の半生と、彼女と教え子との深い信頼関係が正攻法で描かれている。結果として平凡で健気な市民の生活を奪い去る戦争に対する告発に成功しており、そういう意味では本作は反戦映画であるともいえる。
[石塚洋史]
『国分一太郎「二十四の瞳」(朝日ジャーナル編『小さい巨像』所収・1974・朝日新聞社)』▽『『世界の映画作家31 日本映画史』(1976・キネマ旬報社)』▽『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』▽『佐藤忠男著『日本映画史2、3、4』増補版(2006・岩波書店)』▽『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 上』(社会思想社・現代教養文庫)』▽『文芸春秋編『日本映画ベスト150――大アンケートによる』(文春文庫ビジュアル版)』▽『『二十四の瞳』(旺文社文庫・偕成社文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』
壺井栄(1900-67)の長編小説。1952年2~11月《ニュー・エイジ》に連載。瀬戸内海に浮かぶ小島の岬の分校に赴任してきた若い女教師大石久子と,その教え子12人を主人公に,1928年(昭和3)から二十数年間のさまざまな人生を描く。日本の軍国主義化,中国への侵略,第2次世界大戦,そして敗戦へとつながる時代を背景に,登場人物たちのたどった運命を描いたこの作品は,必然的に反戦・平和の主題を展開させている。戦争がもたらした庶民の苦しみ,悲しみを軸に,豊かな郷土色,大石先生に見られる母性,語り調の文体など,壺井文学の特色を結実させた代表作である。木下恵介監督,高峰秀子主演で54年に映画化もされている。
執筆者:鳥越 信
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…以来,好敵手とみなされ,実際,お互いの戦後第1作,木下《大曾根家の朝》と,黒沢《わが青春に悔なし》(ともに1946)は,〈戦後の民主的な日本映画の最初の代表作〉(岩崎昶)になる。戦争の悲劇や反戦の思想を描いたヒューマニズム映画(《陸軍》1944,《日本の悲劇》1953,《二十四の瞳》1954)からロマンティック・コメディ(《お嬢さん乾杯》1949,《カルメン故郷に帰る》1951,《今年の恋》1962)に至るまで,多種多様の主題と傾向の映画をこなすが,その底に共通する二つの大きな特質は〈抒情〉と〈モダニズム〉ということばでしばしば呼ばれるものである。戦後最大の〈催涙映画〉といわれた《二十四の瞳》から《喜びも悲しみも幾歳月》(1957)に至る抒情と感傷,そして,日本最初の国産カラー(フジカラー)による長編劇映画の実験(《カルメン故郷に帰る》),〈純情す〉という新しいことばの使い方にこめられたモダンな感覚(《カルメン純情す》1952),回想シーンをすべて白くぼかした楕円形で囲む試み(《野菊の如き君なりき》1955),歌舞伎の舞台の転換や義太夫,長唄を使った話法(《楢山節考》1958),モノクロを基調にした画面に効果的にほんの一部分だけ着色したパート・カラー方式(《笛吹川》1960)等々のさまざまな新趣向のテクニックを駆使した。…
…特天),肥土山の農村歌舞伎舞台(重要有形民俗文化財)のほか,北部の小海(おみ)には大坂城石垣の石切丁場跡が残る。銚子渓,双子浦や,映画《二十四の瞳》の像として知られる〈平和の群像〉などもある。【赤池 享一】。…
※「二十四の瞳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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