壺井栄(読み)ツボイサカエ

デジタル大辞泉 「壺井栄」の意味・読み・例文・類語

つぼい‐さかえ〔つぼゐ‐〕【壺井栄】

[1900~1967]小説家香川小豆島の生まれ。詩人壺井繁治結婚後、プロレタリア文学運動に参加。作「」「柿の木のある家」「二十四の瞳」など。

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精選版 日本国語大辞典 「壺井栄」の意味・読み・例文・類語

つぼい‐さかえ【壺井栄】

小説家。童話作家。香川県小豆島出身。壺井繁治と結婚。プロレタリア文学運動に参加。昭和一三年(一九三八)「大根の葉」、同一六年「暦」で認められ、多くの人道的な作品を書く。「柿の木のある家」など童話にもすぐれた作品が多い。他に「坂道」「母のない子と子のない母と」「二十四の瞳」など。明治三二~昭和四二年(一八九九‐六七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壺井栄」の意味・わかりやすい解説

壺井栄
つぼいさかえ
(1900―1967)

小説家、童話作家。旧姓岩井。明治33年8月5日香川県小豆島(しょうどしま)のしょうゆ樽(だる)職人の家に生まれた。学歴は小学校卒業のみ。島の郵便局などに勤めたが、1925年(大正14)上京して同郷の壺井繁治(しげじ)と結婚。プロレタリア詩人だった夫とその友人だった宮本百合子(ゆりこ)、佐多稲子(さたいねこ)などの影響で、38歳のとき処女作『大根の葉』(1938)を発表、以後小説と童話の多彩な創作活動に入った。代表作として、小説に『暦』(1940)、『妻の座』(1949)、『裲襠(うちかけ)』(1955)、大人とともに子供にも読める家庭小説に『柿(かき)の木のある家』(1949)、『母のない子と子のない母と』(1951)などがあり、『二十四の瞳(ひとみ)』(1952)は映画化されて大衆の涙をそそった。童話集に『海のたましひ』(1944)、『十五夜の月』(1947)など。社会革新の思想を内に秘めつつ庶民感情にたった暖かな作風で、多くの読者の支持を受けた。芸術選奨(1952)、女流文学賞(1955)などを受賞。昭和42年6月23日没。

上笙一郎

『『壺井栄全集』全10巻(1968~69・筑摩書房)』『『壺井栄児童文学全集』全四巻(1964~65・講談社)』『壺井繁治編『回想の壺井栄』(1973・私家版)』


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百科事典マイペディア 「壺井栄」の意味・わかりやすい解説

壺井栄【つぼいさかえ】

作家。小豆島生れ。1925年詩人壺井繁治と結婚し,アナーキズムの詩人や林芙美子平林たい子らと知り合った。またナップの仕事を通じて宮本百合子佐多稲子を知った。佐多からすすめられて文章を書きはじめ,1938年短編《大根の葉》を発表して文壇に認められた。以後《暦》《妻の座》《柿の木のある家》《二十四の瞳》など,郷土色の濃い,庶民的感覚と愛情にみちた小説や童話を書いた。
→関連項目壺井繁治

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「壺井栄」の意味・わかりやすい解説

壺井栄
つぼいさかえ

[生]1900.8.5. 香川,小豆島
[没]1967.6.23. 東京
小説家。高等小学校卒業後,郵便局などで働きながら同郷の黒島伝治壺井繁治らの影響を受け,上京して壺井と結婚。ナップの運動を手伝い,『働く婦人』編集部に参加 (1932) 。佐多稲子,宮本百合子らと知合って創作を始め,短編集『暦』 (40) ,『ともしび』 (41) など童話風,民話風の作品で認められた。第2次世界大戦後は,『妻の座』 (47~49) ,『柿の木のある家』 (49) ,『母のない子と子のない母と』 (51) ,『二十四の瞳』 (52) などの作品で流行作家となった。ほかに『岸うつ波』 (53) ,『裲襠 (うちかけ) 』 (55) など。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「壺井栄」の解説

壺井栄
つぼいさかえ

1899.8.5~1967.6.23

昭和期の小説家。香川県出身。高等小学校卒業後,役場などで働きながら文学に親しむ。1925年(大正14)上京,詩人壺井繁治と結婚。夫の交友を通じプロレタリア作家佐多稲子・宮本百合子と知り合う。35年(昭和10)以降貧しい庶民の暮らしを描く小説を次々に発表。42年「十五夜の月」以後は童話も執筆。第2次大戦後の47年反戦の思いをこめた「二十四の瞳」を発表し好評を得る。作品「柿の木のある家」「母のない子と子のない母と」。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「壺井栄」の解説

壺井栄 つぼい-さかえ

1899-1967 昭和時代の小説家。
明治32年8月5日生まれ。壺井繁治(しげじ)と結婚。プロレタリア文学運動を通じて宮本百合子,佐多稲子を知る。昭和13年「大根の葉」を発表。「二十四の瞳(ひとみ)」は映画化されてひろく知られる。昭和42年6月23日死去。67歳。香川県出身。旧姓は岩井。作品はほかに「暦」「柿の木のある家」など。
【格言など】名誉の戦死など,しなさんな。生きてもどってくるのよ(「二十四の瞳」)

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世界大百科事典(旧版)内の壺井栄の言及

【児童文学】より

…その間にあって,宮沢賢治,新美南吉の童話は想像ゆたかな物語性で異色を放ち,また幼年童話における浜田広介は独特な調子で近代説話を語り,それぞれ戦中・戦後にわたって広範な読者をもった。 第2次世界大戦後,平和と民主主義という新しい価値観の到来とともに,《赤とんぼ》《銀河》《子供の広場》など文化的・進歩的な児童雑誌の創刊があいつぎ,一種熱っぽい状況のなかで,石井桃子《ノンちゃん雲に乗る》(1947),竹山道雄《ビルマの竪琴(たてごと)》(1948),壺井栄《二十四の瞳》(1952)など今日にも残る作品が生まれた。これらはいずれも短編中心だった日本の児童文学にはめずらしい本格的な長編作品だったが,その作者がいずれも未明を中心とした童話文壇の人脈でないところから現れた点は象徴的である。…

【二十四の瞳】より

…壺井栄(1900‐67)の長編小説。1952年2~11月《ニュー・エイジ》に連載。…

※「壺井栄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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