亜セレン酸 (あセレンさん)
selenious acid
化学式H2SeO3。二酸化セレンSeO2を熱湯に溶かし加熱濃縮し,冷却すると得られる,無色または白色の六方晶系の結晶。吸湿性がある。融点約70℃,比重3.00(15℃),水に溶けて弱い酸性を呈する。酸解離指数pKa1=2.54,pKa2=8.02(18℃)。エチルアルコールに可溶。結晶を熱すれば水を失いSeO2となる。中程度に強い酸化剤であり,二酸化硫黄SO2,ヨウ化水素HI,硫化水素H2Sなどを酸化し,自身は容易に還元されて金属セレンになる。ピラミッド型のSeO3基が水素結合によってつながり層状の構造をなしている。
亜セレン酸塩
中性塩MI2SeO3,酸性塩MIHSeO3が知られている。亜セレン酸ナトリウムNa2SeO3・5H2Oは無色の結晶。水によく溶け,水溶液は加水分解してアルカリ性を呈する。還元剤として用いられる。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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亜セレン酸(塩)
アセレンサン
selenious acid(selenite)
酸:H2SeO3(128.98).二酸化セレンを熱水に溶解し,これを濃縮放冷すると得られる.斜方晶系.三方すい型のSeO3が層状に並び,その間をHが水素結合で結んでいる.Se-O 1.72~1.76 Å,H-O…H2.5~2.6 Å.∠O-Se-O約100°.無色の結晶.密度3.00 g cm-3.加熱すると脱水してSeO2となる.水に易溶.水溶液は弱酸性を示す(K1 2.4×10-3,K2 4.8×10-9).酸化剤(オゾン,過酸化水素,フッ素など)でセレン(Ⅵ)酸に酸化され,還元剤(硫化水素,二酸化硫黄,ヒドラジン,ヒドロキシルアミンなど)でセレンに還元される.アルカロイド,アセチレン,フェノールなどと鋭敏な呈色反応を示すので,これらの分析試薬に用いられる.有毒.[CAS 7783-00-8]
塩:MⅠ2SeO3.このほかにMⅠ2(O2SeOSeO2)型の縮合体,また,MⅠHSeO3型,MⅠ H3(SeO3)2型の酸性塩がある.アルカリ金属塩は水酸化物または炭酸塩と亜セレン酸との反応で得られる.ほかの金属塩はアルカリ金属塩とほかの金属塩との複分解で得られる.Na2SeO3・5H2Oは水に易溶の白色の固体で,水溶液は弱アルカリ性を示す.固体を加熱すると容易に水を失って無水物になる.ガラスを侵す.ガラスや磁器の装飾的加工,細菌学試薬(細菌の選択的増菌培地)などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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亜セレン酸
H2SeO3 (mw128.97).亜硫酸の硫黄に対応するセレンの酸化状態にある酸で,セレン欠乏症の治療効果は原子状セレンおよび無機セレン化合物の中で最も活性が高い.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の亜セレン酸の言及
【セレン】より
…
[性質]
おもな同素体として,無定形セレン,単斜晶系セレン,灰色(金属)セレンがある。無定形セレンには,融解セレンの急冷による黒色(薄層では赤色)のガラス状セレンと,亜セレン酸塩の還元による赤色の粉末セレンがある。粉末セレンは二硫化炭素に可溶で,この溶液を72℃以下で蒸発結晶化すると深紅色のα形およびβ形の単斜晶系セレンが生成する。…
※「亜セレン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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