日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜鉛族元素」の意味・わかりやすい解説
亜鉛族元素
あえんぞくげんそ
zinc group element
周期表第12族に属する亜鉛、カドミウム、水銀の3元素の総称。いずれも地殻中における存在量は少ないが、鉱床をつくって産出するので古くから知られていた。なかでも水銀は古くからよく知られており、古代七金属の一つで、遊離金属としても産することがある。天然には硫化鉱物として産することが多い。単体はいずれも銀白色の軟らかい金属で、融点、沸点が低く、揮発しやすい。とくに水銀はすべての金属中で融点がもっとも低く、常温で液体の唯一の金属である。亜鉛族元素は相互に、また他の多くの金属と合金をつくるが、水銀との合金はとくにアマルガムとよばれる。化合物は酸化数がいずれも+Ⅱが普通である。+Ⅰは亜鉛、カドミウムではきわめて不安定で化合物はあまり知られていないが、水銀では多数の化合物が知られている。
[中原勝儼]