改訂新版 世界大百科事典 「交通広告」の意味・わかりやすい解説
交通広告 (こうつうこうこく)
交通輸送機関の管理する車両の内外および駅舎,用地などを利用して掲出する広告。車両の外部にある外側広告,内部の中づり,額面,つり皮,欄間の各広告,駅舎では駅名標示板,階段,ベンチ,ポスター,用地内では建植(けんしよく)広告,野立ち看板など,多種多様にわたっている。交通広告の起源は,1820年代,側面に広告を描いた大箱をのせたロンドンにおける広告馬車であるといわれる。1826年の宝くじ売出しの広告馬車や30年にニューヨークを駆け回ったゴスリング靴墨の馬車はとくに有名。日本でも1885年に東京の鉄道馬車会社が車内広告を開始している。現代では交通機関の発達に伴って,電車,汽車,バス,タクシーのほかに船着場や空港ロビー内の看板,船舶や航空機の内部の広告などにまで及んでいる。交通広告は沿線の乗降客という対象者にしぼっての訴求が容易であるため,百貨店,スーパーやレジャー施設が,商勢圏に合わせて路線を選択できるという特徴がある。また,同一表現の広告物を全国主要駅に計画的に掲出することによって,ネットワーク効果をも期待できる。このように路線,期間,回数を調整することによって,地域的あるいは全国的な広告計画のいずれにも対応できる。しかし,交通機関やその施設は公共性の高いものであるだけに,美観・安全・風俗などを乱すような広告にはきびしい規制が課せられる。日本では,高速自動車道路や新幹線が伸びるにつれて,それらの沿線では広告の禁止区域を設けることが多くなってきている。交通広告で最も日常的な車内広告は,通勤圏の拡大に伴って,朝夕,遠距離を通うサラリーマンや学生に対する接触度はとくに高い。したがって,中づり広告には紙片以外に不織布,レースカーテン,銀紙などが考案され,商品情報をスマートに提供しようと各種の試みがなされている。ちなみに交通広告の料金は,その乗降客数に応じて定められている。
執筆者:島守 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報