1732年(享保17)に中国,四国,九州および近畿地方の一部を襲った飢饉。この後の天明,天保の飢饉とあわせて江戸時代の三大飢饉とよばれる。その様子は《草間伊助筆記》に〈七八月ニ到り,西国・九州・四国・中国筋都テ稲虫一チ時ニ生シ,次第次第ニ五畿内迄も移り,此虫後ニハ大キニ相成りこがね虫之如クニテ悉ク稲ヲ喰ヒ枯シ申候,(中略)其虫形チ甲冑ヲ帯シたるやうニありて,一夜之内ニ数万石之稲ヲ喰ヒ,田畑夥敷損毛有之,土民飢渇ニ及ヒ,西国筋ゟ五畿内大坂辺迄道路ニ倒レ候もの数しれす,米価古銀ニテ五六月頃ゟ七月中旬迄ハ壱石六拾四五匁,追々高直ニ相成り,九十月之頃百弐三十匁ニ成候〉と記されている。つまり享保の飢饉は稲虫あるいは蝗虫(イナゴ説もあるが,ウンカ説が正しいようである)の大量発生が直接の原因となって引き起こされた。この点で,天候不順が主原因の天明,天保の飢饉と異なり,被害地が西国中心である点も天明,天保の飢饉と異なっている。その被害は《日本災異誌》によれば,損毛率50%以上の諸藩は西国,中国,四国を中心に46藩で,うち西国27藩は損毛率83%に達する大被害をうけている。飢人数は幕領67万1961人,諸藩197万4059人,餓死人1万2172人とされている。幕府は救済策として諸大名,旗本などに米を払い下げ,金銀を貸与し,幕領には夫食(ふじき)米を支給し,種籾や種麦代,牛馬代などを貸与し,さらに富裕者に対して窮民の賑恤(しんじゆつ)をうながすなどの方策をとった。なお米の不作はたちまち米価の高騰をもたらして都市問題をも生じ,江戸最初の打毀といわれる米商高間伝兵衛の打毀が起こったのは翌年正月のことであった。が,翌年は豊作となったこともあって飢饉も終息に向かった。
執筆者:斎藤 洋一
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1732年(享保17)秋から翌年春にわたる大飢饉。32年夏、瀬戸内海沿岸を中心にバッタの大群が発生し、とくに九州東部、中国および四国の西部を中心に、畿内(きない)以西の稲作は大損害を受けた。損害が過半に及んだ藩は46藩、過去5年平均の年貢収入の4分の3近くを失い、その他の藩や幕領も甚だしい減収となり、被災民265万人、餓死者1万2000人に達したという。凶作の影響はこの年の暮れから翌春にかけて大都市にも波及し、連年低落を続けてきた米価が数倍に暴騰し、大坂、京、江戸の住民の生活を脅かし、不安の空気を生じた。33年正月25日には、幕府の御用米商高間伝兵衛(たかまでんべえ)が大量の米を隠匿しているとの噂(うわさ)に怒った江戸の窮民約1700人が伝兵衛宅を破却した。大都市最初の打毀(うちこわし)である。混乱は次の麦の収穫期から鎮静に向かったが、享保の改革の緊縮・府庫充実政策を一頓挫(とんざ)させた事件であった。
[辻 達也]
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1732年(享保17)に伊勢・近江両国以西の西国一帯をおそった大飢饉。同年7~8月頃からイナゴ・ウンカ・ズイムシなどの虫害で作物が大打撃をうけた。作物の出来が例年の半分以下の藩は46,関係諸藩の収穫高62万8000石余に対し,損毛高は173万石余に及んだ。翌年1月には,飢人が藩領分だけで96万9946人,餓死人7448人,死んだ牛馬2353匹に及んだ。幕府や諸藩は備蓄米の放出,東国などからの廻米,酒造制限などの措置で切り抜けようとしたが,米価の高騰は著しく,同年1月26日には,江戸で最初の大規模な打ちこわしがおきた。
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…幕府は米価引上げのため幕領には60万石の置籾を,諸大名・商人には買米を命じ,1725年から江戸・大坂に米会所設立を計画したが失敗,大坂堂島米市場での延取引(空米取引)を公認した。32年西日本が蝗害でいわゆる享保の飢饉となり,被災飢民約260万,餓死者1万2000という被害を受けた。被災地に大量の救援米を回送したため米価が高騰し,33年1月江戸で米問屋高間伝兵衛店を細民が襲う最初の都市打毀が起こった。…
… 1732年(享保17)にはウンカの被害によって近畿以西,なかでも西海道地域は惨状を呈した。享保の飢饉は多くの餓死者を出したが,肥前国でも大きな被害が発生した。しかし藩側の対応で餓死者数が異なった。…
…江戸中期には栗田樗堂,百済魚文らにより,伊予俳諧の全盛を迎える。1732年(享保17)享保の飢饉は松山藩にも大被害を与え,種麦を枕に餓死した筒井村(現,伊予郡松前町)義農作兵衛の話が生まれた。藩内の餓死者は3400人に達したという。…
※「享保の飢饉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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