改訂新版 世界大百科事典 「人口調査」の意味・わかりやすい解説
人口調査 (じんこうちょうさ)
population census
人口調査は人口静態(人口動態)調査の一つの方法である。人口集団の特定の時点における状態を調査する方法は,この人口調査のほかに登録人口調査や推計がある。しかし人口静態統計としては,人口調査が一般に最も正確である。もっとも,人口調査結果の完全性,正確性は国によりあるいは時代によって著しく異なっていることはいうまでもない。とくに開発途上国における人口調査では,総数のみならず年齢報告において不完全,不正確である場合が多い。日本の人口調査は,法律によって国勢調査とよばれているが,近代的人口調査であることには変りはない。人口調査の周期は10年制の国と5年制の国とがある。日本は,毎10年の国勢調査の中間の毎5年に簡易な方法によって国勢調査が行われ,前者は大規模調査あるいは本調査,後者は簡易調査とよばれているが,実質的には5年制であるといってよい。調査事項は国により,時期により異なっているが,そのおもな事項は次のようである。(1)人口学的事項 男女の別,年齢,出生力(結婚時期,出生数,現存子ども数等),(2)人類学的事項 人種,国籍,常用語,母語等,(3)社会文化的事項 世帯上の地位,配偶関係,出生地,常住地,宗教,教育程度,読み書き能力等,(4)経済学的事項 職業,従業上の地位,副業,所属産業,従業の場所,就業状態,住宅,所得等,(5)政治的事項 選挙権,市民権,兵役関係等。日本においても,人口移動や出生力についての調査が行われている。通勤・通学人口の往復移動,利用交通手段とともに常住地の移動調査のための工夫がなされている(たとえば,現住居入居時期と前住地の調査)。調査対象人口については,調査時刻に特定の地域に現存する人口を対象とする現在人口または事実人口population de facts主義と,特定の地域に常住する人口を対象とする常住人口population de jure主義の両者がある。
日本の近年の国勢調査では常住人口調査となっており,〈常住している者〉とは,当該住居に3ヵ月以上にわたって住んでいるか,あるいは3ヵ月以上にわたって住むことになっている者,と定義されている。なお国勢調査時点以外の人口については,国勢調査人口を基礎に自然増加,社会増加などにより毎月1日現在の総人口,日本人人口を推計する〈人口推計〉が行われている。また住民票の転入前住所による国内人口の地域移動状況の調査として〈住民基本台帳人口移動〉があり,これを利用すればごく近い時期の市町村の各月ごとの人口を知ることができる。
→人口 →人口統計
執筆者:黒田 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報