人工地形(読み)じんこうちけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人工地形」の意味・わかりやすい解説

人工地形
じんこうちけい

人間の諸活動が作用して形成された地形であり、人間が直接的に改変している人造地形、人間の働きが自然の地形形成営力に影響を与えた結果、形成された人為誘導地形に分けられる。後者を人工地形と自然地形の中間に位置する地形として、人為的自然地形とよぶ研究者もいる。直接的人工地形が形成されている場所は、鉱業関係を除くと大部分は人間生活の舞台となりやすい丘陵台地低地である。改変規模は面積と移動土量により表されるが、前者は低地で、後者は丘陵で大きくなる。日本では1960年(昭和35)ころから都市周辺での人工地形が目だつようになったが、歴史的にみると早い時期から形成されている。古墳築造須恵器(すえき)生産による丘陵地の改変、条里型地割の施行、灌漑(かんがい)を主目的とした用水路の築造、干拓地造成たたら製鉄の原料の砂鉄採取などである。直接的人工地形を目的別に分類すると、農業開発――丘陵や台地の平坦(へいたん)化と干拓、工業用地の造成――海面の埋立てと一部丘陵や台地の平坦化、宅地開発――丘陵や台地の平坦化、低地の盛り土と海面の埋立て、レジャー開発――ゴルフ場、スキー場の造成など、鉱業――前述の砂鉄採取のほか、露天掘り、ボタ山の造成など、交通路――道路および鉄道建設、ダム建設などがあげられる。

 間接的人工地形としては、植生の減少などによる侵食の加速化、河川改修による河川営力の変化、海岸線の変化などがあげられる。植生の減少による自然営力の変化は、日本列島のような湿潤地域でも焼き畑農業、製塩、窯業の燃料用の材木伐採などにより発生したが、もっとも大きな影響を受けたのは乾燥地帯である。半乾燥地で耕地化が進むと急速に土壌侵食が進み、また、草の成長量以上に家畜が放牧されると過放牧となり、雨水の流失が加速してアロヨarroyoとよばれる人工の大規模なガリ(何本も平行した溝状の地形)が形成される。また、風による侵食も始まり、固定砂丘は再移動を始める。河川にみられる変化としては、山地荒廃による天井川の形成、ダム建設による河床の上昇と低下、河川改修による流速の増大とそれに伴う侵食力の増大などがあげられる。海岸にみられる変化としては、ダム建設による海岸侵食や放水路築造による海岸線の前進と後退などがあげられる。

 以上のような人工地形の形成は環境保全にマイナスの影響を与えることもあり、土地自然の反応が自然災害となって現れることもある。たとえば、山地前面の宅造地は土石流の直撃を受ける可能性があり、改修工事で流速が増大した河川では洪水災害が増大する可能性もある。とくに1960年代から改変された都市周辺の人工地形は、現在はほとんど植物に被覆されており、一見自然地形と区別がつかなくなっている所がある。そのため、上記の災害にとくに注意しておく必要がある。

[赤木祥彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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