改訂新版 世界大百科事典 「人間の権利協会」の意味・わかりやすい解説
人間の権利協会 (にんげんのけんりきょうかい)
Société des Droits de l'Homme et du Citoyen
フランスの共和主義的政治結社。1830年8月〈ロベスピエールの人権宣言〉をかかげ結集した小グループを起源とし,〈人民の友協会〉に加入していたが,32年末,弾圧による〈人民の友〉の解体後,同グループはそのメンバーを吸収しつつ,組織の再編・拡大を行った。その際刑法の適用を逃れるため,末端を20名以下のセクションとし,各地区委員,区委員を介し中央委員会(11名)が指導する体制を確立した。33年4月,ルボンNapoléon Lebon(1808-?)の急進派とラスパイユFrançois-Vincent Raspail(1794-1878)の穏健派の対立が深刻化したが,急進派が勝利をおさめ,〈ロベスピエールの人権宣言〉を採択し,組織機構の民主化が徹底された。加盟員は,33年上半期には約4000名と増加し,またリヨンほか全国に支部を結成,七月王政初期の共和主義運動の中心的存在となった。同派は特に労働者への宣伝・教育活動を活発に展開し,多数の労働者の加入を招き,これが同派の拡大の原動力となったが,同時にそれは協会の活動に社会的性格を付与することにもなった。失業などの相互扶助,就業斡旋等が組織活動として行われ,また〈宣伝委員会〉にはパリの職能別組織の代表者が結集し,33年の首都の大ストライキにおいて指導的役割を果たした。労働者大衆と結びついたこの共和派の運動の抑圧を目的として34年結社法が制定され,4月の蜂起の後,同協会は解体した。
執筆者:赤司 道和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報