他所者(読み)よそもの

精選版 日本国語大辞典 「他所者」の意味・読み・例文・類語

よそ‐もの【他所者】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「よそもん」とも ) よその土地から移り住んだ者。他国者。また、仲間はずれの者。
    1. [初出の実例]「すこし毛色の変った他所者(ヨソモノ)と見れば」(出典旧主人(1902)〈島崎藤村〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「他所者」の意味・わかりやすい解説

他所者 (よそもの)

自分たちの社会の成員でない者のこと。その社会とまったく関係のない者は他所者と呼ばれることもないが,なんらかの形で接触交渉が生じると,他所者と認識され,そのように呼ばれることになる。日本の伝統的な村落社会においてはウチとソトを区別する観念は強く,ムラに対しソトの世界をセケン(世間)とかタビ(旅)といった。人間についても自分たちの仲間とそうでない者を明確に区別し,セケンやタビの者を他所者として位置づけた。他所者には,他所から移住してきて村落内に居住しながら他所者としての扱いを受ける者と,他所に居住していてその村落となんらかの社会関係を形成して他所者と認識されるにいたった者とがある。前者キタリモノとかキタリドなどと呼ばれ,村落内に居住してもすぐには村入りを認められることはなかったし,村入りを認められて後も,祭祀への参加や共有財産の利用などさまざまな面において本来の村人と差別されることが多かった。他所者が完全な村人になるには数代を経過しなければならなかった。しかし,他所者は,村落内での社会関係がほとんど存在しないため,かえってある程度自由に行動でき,商業活動で富を蓄積したり,土地を集積することも少なくなかった。したがって,他所者がつねに村落の下層を構成するわけではなかった。後者の村外居住者の他所者は,さまざまな形で村落を訪れて来る人々であった。行商職人はその代表であるが,旅の宗教者や門付芸人,物乞いなども含まれる。彼らは村落に一時的に滞在して,村人にさまざまな物資や情報を提供してくれる存在であった。村落の秩序外にある世間師の彼らは危険な存在として警戒されたが,同時に村人が自給できないものや珍しいものをもたらしてくれ,また世間の動きを教えてくれる人々として歓迎され,歓待された。いずれの他所者についても,村落秩序が弛緩するにつれ,制度的に区別したり差別することはなくなってきたが,意識としては現在なお強いものがある。そして,この観念は,ウチの人間としての日本人に対し,他所者としての外国人をはっきりと区別することに引き継がれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「他所者」の意味・わかりやすい解説

他所者
よそもの

村落社会の構成員として認められていない家,もしくは人。その村落内に居住しながら正式の構成員とはなれない他所者と,その村落となんらかの関係はあるが村落外に居住している文字どおりの他所者とがある。

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