他所から移住してきた家や村内で新たに分家した家がムラ(村)の成員となるために行う儀礼や手続。またムラにすでに存在する家へ婿養子に来たり,嫁入りしてきた者がムラの成員となる披露の儀礼もいう。前者の家をムラの成員として承認する村入りの方法は,非常に厳しい所から比較的簡単な所までさまざまである。厳しい所では村内に住むだけでは村入りは認められず,一定年数を平穏にムラで過ごした後にはじめて村入りの手続がなされることもある。村入りの条件の厳しい所は,ムラの生産・生活の条件が厳しく,新しい家の成立による戸数の増加が旧来の家を圧迫しかねないようなムラに多いが,またムラが多くの財産を持っていて各家の持分や収益の配当が大きな存在になっているため,戸数の増加による収益配分の減少を恐れての場合もある。この場合は村入りに際して共有財産の1戸の持分に相当する現金をムラに納めることが加入条件となっていることが多い。
他所から転入してきた家の村入りに際しては,村内の人間を保証人にたて,その人の紹介と保証で加入するのが一般的である。この保証人のことを東日本ではワラジオヤ(草鞋親),西日本ではヌレワラジということが多い。だれを保証人に頼むかは村落の社会構造によって異なる。同族団や親分・子分関係が強い所では,村内の有力者をワラジオヤに頼み,その紹介で加入するとともに,ワラジオヤを本家とする同族団や親分とする親分・子分関係の中に組み込まれて生活を維持することとなった。それに対し非同族的な村落では,そのときのムラの役職者や近隣の者の紹介で加入する。村入りによってムラの正式の成員となり,はじめて家の維持存続が可能になるのであるが,すべての点で旧来の家と同等に扱われるとはかぎらなかった。祭りへの参加や共有財産の利用などで差別されることも少なくなかった。分家の村入りは本家が保証人となって申し込み,ごく簡単に承認されるのが普通であるが,この場合も旧来の家と差別されることは珍しくなかった。また,婿養子や嫁としてムラに来た個人の村入りは,すでにムラの成員としての家は存在するので,個人として村入りを承認されればよく,手続は簡単で,披露として寄合(よりあい)や祭礼の席に酒を出すという程度が多い。ムラが各家の維持存続に不可欠な存在であったころは,ぜひとも村入りを果たさねばならなかったが,ムラに依存せずに生活できるようになると,村入りをしてムラの成員になることがかえって煩わしいこととなり,村内に居住していてもムラの成員でないという家や人を増大させた。
執筆者:福田 アジオ
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…他所者には,他所から移住してきて村落内に居住しながら他所者としての扱いを受ける者と,他所に居住していてその村落となんらかの社会関係を形成して他所者と認識されるにいたった者とがある。前者はキタリモノとかキタリドなどと呼ばれ,村落内に居住してもすぐには村入りを認められることはなかったし,村入りを認められて後も,祭祀への参加や共有財産の利用などさまざまな面において本来の村人と差別されることが多かった。他所者が完全な村人になるには数代を経過しなければならなかった。…
※「村入り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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