愛媛県の松山市一帯に行われている万歳。構成は太夫(たゆう)、才蔵、次郎松(じろまつ)、踊子など10名ほどで、太夫の詞(ことば)・唄(うた)、太鼓、三味線、拍子木によって横隊形式の集団舞踊を演じる。服装は金糸銀糸の縫い取りに鏡片やガラス玉を取り付けた折頭巾(おりずきん)、女物の長襦袢(ながじゅばん)に色襷(いろだすき)、ロングスカート状の袴(はかま)といったはでなものである。由来では、寛永(かんえい)年間(1624~44)に藩祖が桑名(くわな)から転封の際上方(かみがた)の万歳が伝わったものというが、芸態からして願念坊(がんねんぼう)の芸が加味されて成立したものだろう。始めと終わりと、曲の間あいだに才蔵踊が踊られるが、「柱づくし」「豊年踊」「義経(よしつね)千本桜」などの曲がある。たくさんの扇を使って老松(おいまつ)を表す「松づくし」は有名であり、寸劇も演じる。
[西角井正大]
…万歳の宮中への参入は大正時代中ごろまであったといい,民間では第2次世界大戦ころまでは盛んであったが,戦後はしだいに衰微し,現在は全国をめぐり歩く万歳の姿はほとんど見かけなくなった。 民俗芸能として地域に残るのは〈尾張万歳〉〈越前万歳〉〈伊予万歳〉などで,〈三河万歳〉〈秋田万歳〉〈加賀万歳〉〈会津万歳〉〈豊後万歳〉は衰微し,〈大和万歳〉〈仙台万歳〉〈津島万歳〉〈伊六万歳〉,沖縄の〈京太郎(ちよんだらあ)〉は廃絶した(京太郎の芸系をひく民俗芸能は現存する)。 万歳は一般には太夫と才蔵の2人が一組になり,太夫が扇をかざし,いろいろとめでたい寿詞(ほぎごと)を言い立て,才蔵が小鼓を打ち囃して合の手を入れる掛合いで進行する。…
※「伊予万歳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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