老松(読み)おいまつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

老松
おいまつ

能の曲およびそれの影響を受けた三味線音楽の曲の名。いずれも祝儀曲。 (1) 能 世阿弥作。脇能物。梅津某 (ワキ) が太宰府安楽寺に参詣し,老翁 (前ジテ) から老松と飛梅のいわれを聞き,のち,夜ふけになって老松の精 (後ジテ) と梅の精 (後ヅレ) が現れて舞を舞う。 (2) 常磐津節 延享4 (1747) 年1世常磐津文字太夫,佐々木市蔵作曲。詞章は (1) から抄作。常磐津節創流の記念曲。同流最古の曲。 (3) 富本節 寛延1 (1748) 年1世富本豊前掾作曲。歌詞は (2) のまま。常磐津節から富本節が分派独立した際に新しく節づけしたもの。 (4) 清元節 本名題『栄能春延寿 (さかえのはるのぶることぶき) 』。 (3) をそのまま受継いで清元風に改作し,改題したもの。 (5) 長唄 文政3 (1820) 年4世杵屋六三郎作曲。お座敷長唄の最初の作品。 (1) からヒントを得てはいるが,歌詞借用は部分的で,郭 (くるわ) 情緒も含み,歌詞全体に一貫した意味はない。神舞の合方,松風の合方があって三味線も活躍する音楽本位の曲。 (6) 一中節 安政2 (55) 年亀丈作詞,菅野序国,菅野序藤作曲。詞章は (1) とほとんど同じ。

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デジタル大辞泉の解説

おいまつ【老松】[曲名]

謡曲。脇能物世阿弥作。都の人が天神のお告げ筑紫の安楽寺へ行くと、老松の精が現れ、飛び梅と追い松の伝説を語って舞をまう。
能の「老松」をもとにした常磐津富本清元長唄一中節などの曲名。

ろう‐しょう〔ラウ‐〕【老松】

長い年月を経た松。古松。おいまつ。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションの解説

おいまつ【老松】

兵庫の日本酒。酒名は、千載の齢を経ても緑を保つ松の老木にあやかり命名。大吟醸酒、吟醸酒、純米酒本醸造酒などをラインナップ。原料米は日本晴山田錦。仕込み水は蔵内の井戸水蔵元の「伊丹老松酒造」は元禄10年(1697)創業。所在地は伊丹市中央。

おいまつ【老松】

大分の日本酒。酒名は、老松神社の湧水を酒造りに使用したことに由来。本醸造タイプの無加糖清酒。仕込み水は英彦(ひこ)山の伏流水。蔵元の「老松酒造」は寛政元年(1789)創業。所在地は日田市大鶴町。

おいまつ【老松】

兵庫の日本酒。純米酒、本醸造酒、普通酒がある。原料米は夢錦、日本晴。仕込み水は揖保川の伏流水。蔵元の「老松酒造」は明和5年(1768)創業。所在地は宍粟市山崎町山崎。

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デジタル大辞泉プラスの解説

老松

京都市上京区に本社を置く和菓子店、老松が製造・販売する和菓子。柚子風味の白餡入りの焼饅頭。北野風土菓のひとつ。

老松

京都府京都市、末廣屋が製造・販売する銘菓粒餡とこし餡を合わせて平らに焼いたもの。

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世界大百科事典 第2版の解説

おいまつ【老松】

(1)能の曲名。脇能物。神物世阿弥作。シテは老松の神霊。都に住む梅津某(ワキ)が筑紫の安楽寺を訪ねる。来かかった老人(前ジテ)に尋ねると,境内の松と梅は菅原道真遺愛の木で,梅は紅梅殿(こうばいどの),松は老松という名があり,ともに天満宮の末社として神にまつられていると説明する。そして梅と松の徳を,唐土始皇帝の故事など引いて物語るうちに姿は消える(〈クセ〉)。夜に入り,老松の精が気高い老体の神姿(後ジテ)で現れ,こうごうしい舞を舞い(〈真(しん)ノ序ノ舞〉),御代をことほぐ。

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大辞林 第三版の解説

おいまつ【老松】

能の一。脇能わきのう物。世阿弥ぜあみ作。老松の精が御代の栄えをことほぐ。
三味線音楽の曲名。御祝儀曲。能の「老松」による。常磐津ときわず・長唄・富本・一中にある。
常磐津。1747年、常磐津節創立の際、佐佐木市蔵が作曲。演奏会の終わりに奏される。
長唄。1820年、四世杵屋きねや六三郎作曲。お座敷長唄の先駆け。

ろうしょう【老松】

年をへた松。おいまつ。古松。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

老松
おいまつ

(1)能の曲目。初番目・脇能物(わきのうもの)。五流現行曲。同じ世阿弥(ぜあみ)作であり、松のめでたさを主題としながら、『高砂(たかさご)』の後シテはりりしい男神であり、これは翁(おきな)さびた老神である。流罪の菅原道真(すがわらのみちざね)を慕って九州に飛び来たった飛び梅と、追い松の伝説。道真を葬った安楽寺を訪れた都人(ワキ)の前に、老翁(前シテ)と若い男(ツレ)が現れて、神と祀(まつ)られた梅と松のことを物語る。老松の神霊(後シテ)は、のどかな春をたたえつつ荘重な舞を舞い、天皇の御代(みよ)をことほぐ。土地で紅梅殿(こうばいどの)と崇(あが)められる梅の精を、天女の姿で登場させる替(かえ)の演出のほうが本来の行き方で、前段のツレも女性の姿であったのが、他の脇能の類型に従って男の役にしたものであろう。[増田正造]
(2)常磐津(ときわず)、富本(とみもと)、清元(きよもと)、長唄(ながうた)、一中節(いっちゅうぶし)などの三味線音楽に同名の曲があり、いずれも能をもとにし、祝儀曲として格調をもつ。とくに常磐津は1747年(延享4)常磐津文字太夫(もじたゆう)が宮古路から改名したときに披露した、常磐津最古の曲で、一中節の影響もかなり残っている。また長唄は、1820年(文政3)4世杵屋(きねや)六三郎作曲で、演奏会用の、いわゆるお座敷長唄のはしりである。[茂手木潔子]

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世界大百科事典内の老松の言及

【長唄】より

…さらにこの時代には,舞踊の伴奏音楽という制約から離れた鑑賞用長唄(お座敷長唄)が誕生した。これは長唄演奏者の芸術的意欲の高揚から生まれた新傾向の長唄で,このころには《老松(おいまつ)》《吾妻八景(あづまはつけい)》《外記節石橋(げきぶししやつきよう)》などが作曲されている。また,長い間,市川家荒事舞踊の伴奏音楽をつとめていた大薩摩節が衰退し,1826年(文政9)その家元権が4世杵屋三郎助(のちの10代目杵屋六左衛門)に預けられた結果,大薩摩節の旋律を加味した長唄が積極的に作曲されるようになった。…

※「老松」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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