体細胞クローン(読み)タイサイボウクローン

デジタル大辞泉 「体細胞クローン」の意味・読み・例文・類語

たいさいぼう‐クローン〔タイサイバウ‐〕【体細胞クローン】

皮膚臓器など特定組織に分化した体細胞を用いて遺伝的に同一の個体を作りだすクローン技術。皮膚や乳腺などの体細胞から取り出した核を、別の個体から採取し核を取り除いた卵細胞に移植して再構築胚を作製し、さらに仮親となる別の個体に移植して作る方法が一般的。
[補説]体細胞クローン動物は出生前後や若齢期の死亡率が高い。これは、再構築胚が十分な全能性(生体を構成するすべての細胞に分化する能力)を獲得していないために起こると考えられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「体細胞クローン」の意味・わかりやすい解説

体細胞クローン
たいさいぼうくろーん

哺乳(ほにゅう)類の成体(大人)の体細胞から生まれたクローン。体細胞としては、乳腺細胞、卵管細胞などが使われている。1997年2月に発表されたイギリスのクローン羊が世界初(誕生は1996年)。1998年(平成10)7月には日本で、体細胞クローンによる初のクローン牛が誕生した。クローンとは遺伝的に同一の個体や細胞の集合をさすが、ウシなどの哺乳類のクローンの作出方法の一つとして体細胞を使う方法がある。優れた特性、たとえばウシの場合であれば良質の肉質や高乳生産量のウシを親と定め、その親牛の体細胞をドナーとして、ドナー細胞に特殊な処理をした後に核だけを取り出し、未受精卵の核を除いたところに核移植してクローンを作出する。つまり、受精というプロセスを含まない無性生殖のために、ドナーと同じ遺伝子特性が後代のクローンに受け継がれるはずである。こうして生まれたクローン動物は、高い品質の家畜の生産や実験動物などの分野で応用可能であり、世界的に研究開発が進んでいる。しかし、動物によっては、作出の成功率や食用を目的とした場合の安全性の確認など、未解決の課題もある。

[飯野和美]

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