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体罰 たいばつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

体罰
たいばつ

肉体に直接苦痛を与える。教育現場では,教育指導の効果を上げることを目的に教師が児童生徒の体に加える罰をいう。1970年頃から教師の行為が教育指導の域をこえた体罰ではないかと社会問題になり,児童生徒への肉体的・精神的な苦痛,学習活動への悪影響が懸念された。学校教育法11条では「校長及び教員は,教育上必要があると認めるときは,…児童,生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし,体罰を加えることはできない」と定めている。一般的に児童生徒への体罰とは,1948年の法務庁法務調査意見長官回答『児童懲戒権の限界について』で示された「体に対する侵害を内容とする懲戒(なぐる,けるの類),肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座,直立など特定の姿勢を長時間にわたって保持させる),食事の不供与,酷使的作業命令」とされる。2007年文部科学省は,体罰による指導では正常な倫理観を養うことはできず,逆に児童生徒に力による解決というを考え方を与え,いじめなどを誘発するおそれがあるとして,「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」を取りまとめ,懲戒・体罰に関する指針とした。

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デジタル大辞泉の解説

たい‐ばつ【体罰】

肉体に直接苦痛を与える罰。

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百科事典マイペディアの解説

体罰【たいばつ】

一定の教育的目的をもって子どもに加えられる肉体的苦痛をともなう懲戒のこと。日本では学校教育法第11条に〈校長及び教員は,教育上必要があると認められるときは,監督庁の定めるところにより,学生,生徒及び児童に懲戒を加えることができる。

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世界大百科事典 第2版の解説

たいばつ【体罰】

一定の教育目的をもって,子どもに加えられる肉体的苦痛をともなう懲戒のこと。体罰は,一定の苦痛を与えることによって,好ましくないと考えられる行為を抑制することを目的とするが,子どもの側から考えると,一定の行為をするかしないかの選択が,その行為に価値があるかないかという観点からではなく,肉体的苦痛を受けるか否かに左右されることになる。したがって,体罰は子どもの主体的な判断による積極的な行為を誘発しないばかりでなく,体罰を加えた者との間に好ましい人間関係をつくりあげることを妨げるおそれすらある。

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大辞林 第三版の解説

たいばつ【体罰】

こらしめのために、身体的な苦痛を与えること。日本の学校教育では、法律によって禁止されている。 「 -を加える」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

体罰
たいばつ

体罰とは、1948年(昭和23)の法務庁法務長官通達「懲戒の程度」によると、「身体に対する侵害、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒」のこととされている。英語でも「身体的懲戒」にあたるphysical punishmentあるいはcorporal punishmentの用語が用いられる。日本の学校では体罰は学校教育法で明確に禁止されている。体罰を行使する教師は懲戒の対象となり、かつ刑法上の責任を問われることが少なくない。[二宮 皓]

体罰の歴史

かつてヨーロッパの国々では、「学校へ行くこと」と「むち打たれること」は同義であるといわれていた。体罰の方法は杖(つえ)やむち、平手打ちなど過酷なものが多く、打撲傷や出血を伴うのが普通であり、なかには死に至るものもあった。ヨーロッパの教育の歴史において、体罰に反対する声はほとんどなく、ペスタロッチやルソーなどでさえも体罰を容認していた。体罰の思想的背景として、『旧約聖書』の思想やカルビニストたちに代表される原罪思想(神の掟(おきて)に背いた人間は堕落し、悪魔の支配を受けるようになったという思想)がある。この思想の下に、子供の矯正の手段として体罰などが正当化されてきたのである。また日本でも、一般的には体罰が広く行われていた。このように、体罰とは世界の歴史のなかで、子供を矯正し、しつける、重要で有効な手段として広く用いられてきた両刃(もろは)の剣である。[二宮 皓]

世界の体罰

こうしたキリスト教的思想背景をもつ体罰の伝統を受け継ぎ、現在でも体罰が容認されているのが、イギリスとその旧植民地諸国である。またテキサス州をはじめとするアメリカ南部の多くの州でも、体罰は認められている。体罰の方法としては、一般にむちやパドルpaddle(体罰板)で生徒の尻(しり)や手を打つ方法がとられている。
 これに対してフランス、ドイツ、スペイン、ポルトガルなどのヨーロッパ大陸諸国、その植民地であった中南米諸国の学校、アメリカでもニュージャージー州をはじめとする北部の州では体罰が禁止されている。これらの諸国でも体罰は古くから行われていたが、19世紀後半以来の人権思想やヒューマニズム的教育思想の高まりに伴い、しだいに体罰を禁止し、今日に至っている。そのほか、イスラム教の諸国、イスラエル、中国などでも体罰は禁止されている。[二宮 皓]

日本の体罰

日本では、世界的にまだ体罰禁止規定の珍しかった、1879年(明治12)の教育令(第46条)により禁止されて以来、第一次、第二次世界大戦中を含め、現在まで一貫して教育上の体罰は禁じられている。1900年(明治33)の小学校令(第47条)では、体罰を禁止する一方、懲戒を認める記述が規定され、現行の学校教育法(第11条)でも同様な見解が引き継がれている。
 1948年(昭和23)の通達「懲戒の程度」に続き、法務庁は49年に通達「生徒に対する体罰禁止に関する教師の心得」で、用便に行かせないこと、遅刻した生徒を教室に入れないことなどを体罰として禁じ、放課後残すこと、掃除当番などの回数を多くすることなどは懲戒として認められるとした。
 1960年代以降、校内暴力の増加に伴って、教師の「愛のむち」「教育愛」としての体罰をめぐる議論が盛んであったが、1981年4月の東京高裁での体罰に関する逆転判決において「社会通念上許される程度の軽微な力の行使は、教師に認められている懲戒権の範囲内の行為であり、体罰には該当しない」という見解が示された。その後、95年(平成7)の東京地裁の判決では、体罰が禁止されていることが改めて確認され、2000年(平成12)1月の神戸地裁では体罰と生徒の自殺の関連を認め、「安全配慮義務違反」として市の責任を認める判決を下した。
 なお、体罰の発生件数については、文部省(現文部科学省)の調べによると、1998年(平成10)に体罰の可能性があるとして事実関係の調査が行われた件数は1010件、実際に体罰事件が発生した学校は833校となっている。[二宮 皓]

今後の課題

以上のように体罰に関する見方は、それぞれの国の人間観や教育観、時代の思想を反映してさまざまである。そして現在でも体罰をめぐる是非(価値判断)、教育上の効果(生徒指導論)、どこまでが懲戒でどこからが体罰か(体罰の定義と基準)など、多くの意見の相違がある。また、文部科学省の家庭教育に関する文脈で語られる「しつけ」との関係や、子どもの権利条約(第19条)で言及されている「身体的若(も)しくは精神的な暴力」に該当するか否かなど、いっこうになくならない教師や親による体罰の現状も含め、教育と体罰は常に切り離せないことがらであるといえる。[二宮 皓]
『ミシェル・フーコー著、田村俶訳『監獄の誕生』(1977・新潮社) ▽沖原豊著『体罰』(1980・第一法規出版) ▽江森一郎著『体罰の社会史』(1989・新曜社) ▽牧柾名・今橋盛勝・林量俶・寺崎弘昭編著『懲戒・体罰の法制と実態』(1992・学陽書房) ▽坂本秀夫著『体罰の研究』(1995・三一書房) ▽藤田昌士編『生活の指導と懲戒・体罰』(1996・東京法令出版)』

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