侠客春雨傘(読み)きょうかくはるさめがさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「侠客春雨傘」の意味・わかりやすい解説

侠客春雨傘
きょうかくはるさめがさ

歌舞伎(かぶき)脚本。世話物。6幕。福地桜痴(おうち)作。通称「春雨傘」。1897年(明治30)4月、東京歌舞伎座で9世市川団十郎らにより初演安永(あんえい)・天明(てんめい)(1772~89)ごろ江戸の十八大通(じゅうはちだいつう)といわれた粋人の一人で「助六(すけろく)」の扮装(ふんそう)をまねた風俗で評判であった浅草蔵前の札差(ふださし)大口屋暁雨(おおぐちやきょうう)を脚色。悪侍逸見一角(へんみいっかく)の横暴に悲憤した札差大口屋治兵衛が、武家に対抗する侠客暁雨となり、一角に討たれた浪人の娘である遊女薄雲を助け、親の敵(かたき)を討たせる話。助六の実録を意図した作で、鉄心斎と改名した一角に吉原仲の町で再会した暁雨が、痛快な啖呵(たんか)を切って仕返しする場面が見せ場である。なお、初演時には「おとこだてはるさめがさ」と読ませたが、今日では「きょうかく~」と称している。

[松井俊諭]

『戸板康二他監修『名作歌舞伎全集17 江戸世話狂言集 3』(1971・東京創元社)』

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「侠客春雨傘」の解説

侠客春雨傘
おとこだて はるさめがさ, きょうかく はるさめがさ

歌舞伎・浄瑠璃外題
作者
福地桜痴 ほか
初演
明治30.4(東京・歌舞伎座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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