改訂新版 世界大百科事典 「保護具」の意味・わかりやすい解説
保護具 (ほごぐ)
作業中の労働者の健康を保護するためには,有害な影響をもたらす環境因子は,これを取り除くか,労働者への接触,暴露を断つかが基本である。しかし,技術的に対策が困難である場合や,その対策が完成するまでに時間がかかる場合に,どうしても作業が必要なら,やむをえず保護具を使用する。事故などで,危険がある状態のなかで緊急な作業が必要なときにも使用する。
保護具には次の種類がある。(1)有害物を吸着して人体への侵入を防ぐためのマスク(防塵用,有毒ガス・蒸気用)。(2)面体内(マスク内)に新鮮な空気を送り込み,面体内を陽圧として外部へ空気を押し出し,有害物の流入を防ぐ送気マスク(ホースマスク)。(3)圧搾した空気を詰めたボンベを利用した空気呼吸器。(4)強烈な騒音を発生する職場での耳栓,耳覆。(5)酸・アルカリ,鉱物油,化学薬品などの飛沫によって皮膚を損傷するのを防ぐための保護衣(服,手袋,長靴)。(6)足,とくにつま先を保護するための安全靴。(7)溶接,炉の監視,その他での有害な紫外線,可視光線,赤外線から目を保護するための保護眼鏡,保護面。(8)炉前作業,消火作業などの著しい放射熱から顔や体を保護するための防熱面,防熱衣。(9)物体の飛来,倒壊の危険のある場所で頭部を保護するための保安帽,このほか,乗車用,荷役用,電気用などの安全帽。(10)診療用X線防護のための特殊な手袋,前掛け,眼鏡,放射性物質用の保護衣,呼吸保護具,全身防護服など。
執筆者:山田 信也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報