改訂新版 世界大百科事典 「保護領」の意味・わかりやすい解説
保護領 (ほごりょう)
植民的保護領ともいう。19世紀後半,ヨーロッパの植民国が,とくにアフリカにおいて,植民地として実効的占有を行うことができない広大な土地を獲得したいとの動機から,いまだ国家的レベルに達していない土地に居住する土着民の首長と合意を結んで,土着民を保護下においたものである。保護領は,概してその後,植民国に併合された。植民国は,第三国が保護領を先占することも,保護領と直接関係をもつことも排除するが,保護領内の第三国の国民および財産について安全を維持する義務を引き受けた。保護領は,なんらの国際的地位をももたない点で,半主権国としての被保護国(保護国・被保護国)とは異なる。イギリスの保護領としては,ケニア,ガンビア,ナイジェリアなどがあった。保護領の性格は国際法的というより国内法的(憲法的)であるから,たとえばケニア保護領が植民地としてイギリスに併合されたとき,その変更は,国際法上,問題とならなかった。
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報