催涙ガス(読み)サイルイガス(英語表記)tear gas
lacrimator

デジタル大辞泉 「催涙ガス」の意味・読み・例文・類語

さいるい‐ガス【催涙ガス】

毒ガス一種涙腺を刺激して涙を催させるもの。クロロアセトフェノンなどを使用

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精選版 日本国語大辞典 「催涙ガス」の意味・読み・例文・類語

さいるい‐ガス【催涙ガス】

  1. 〘 名詞 〙 ( ガスは [オランダ語英語] gas ) 毒ガスの一種。催涙性で目を強く刺激するクロロアセトフェノンなど。暴動鎮圧などのほか化学兵器としても用いる。
    1. [初出の実例]「警官がピストルと催涙ガスを持参で駆けつけるから」(出典:自由学校(1950)〈獅子文六〉檻の内外)

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改訂新版 世界大百科事典 「催涙ガス」の意味・わかりやすい解説

催涙ガス (さいるいガス)
tear gas
lacrimator

刺激剤に分類される化学兵器の一種。鼻孔や目に侵入してきわめて不快な刺激を嗅覚器や涙腺に与える一方,流涙などの生理的排除機構や洗眼,中和剤の使用などで除去すれば傷害を残すことがなく,防毒マスクを装着すれば被害を受けることがないという理由で,暴動の規制のために放射したり,手投げ弾に詰めて投げる方法で使用されている。主として気化しやすい白色粉末であるクロルアセトフェノン(米軍略号CN。以下同じ)が用いられている。歴史的には第1次大戦中にクロルピクリンが使用されて無防備な戦闘員をなやましたが,ベトナム戦争ではアメリカ軍がクロルベンジルマロノニトリル(CS)を壕内に投入して内部にひそむ抵抗者を外部に出させた。ほかにブロムベンジルアニド(CA),ジベンゾンクサセピンCR)がある。非致死剤とはいえ1m3に10g以上あれば致死効果があり,遅延型アレルギーなどの後遺症も残す。なお,催涙ガスは軍隊のほか警察でも使用しており,女性の護身用として市販もされている。
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百科事典マイペディア 「催涙ガス」の意味・わかりやすい解説

催涙ガス【さいるいガス】

涙腺刺激によって催涙効果をもたらす化学兵器。クロルアセトフェノンC6H5COCH2Cl(記号CN)は一時性で,涙で流したり中和剤を使用すれば傷を残すことはなく,防毒マスクをかぶれば影響は受けない。各国軍隊や警察で広く使用され,また女性の護身用としても販売されている。クロルベンジルマロノニトリルC6H4Cl・CH=C(CN)2(記号CS)は目,鼻,のど,皮膚を強く刺激,ベトナム戦争では致死例もあり,超催涙ガスともいわれる。
→関連項目毒ガス

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「催涙ガス」の意味・わかりやすい解説

催涙ガス
さいるいがす
tear gas

毒ガスの一種で、黄褐色固体のクロロアセトフェノン(CN)や白色結晶固体のクロロベンジデリンマロノニトリル(CS)などの化学物質がそのおもなもの。これらの物質を散布すると、人間の涙腺(るいせん)や嗅覚(きゅうかく)細胞に微量に触れるだけで、人間の行動に障害を生じる。しかし高濃度でなければ致死作用に及ばないので、非致死性化学兵器であるとの理由で、化学戦に使用したり、大衆行動鎮圧のために治安当局が手榴(しゅりゅう)弾や放水車によって散布使用することもある。

[和気 朗]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「催涙ガス」の意味・わかりやすい解説

催涙ガス
さいるいガス
tear gas

毒ガスの一種。涙腺を刺激して一時的に視界を奪い,行動を不能にする。クロロアセトフェノン CN系とオルトクロロベンツァルマロノニトリル CS系の2種類が多く使用される。嘔吐剤 (DMガス) とともに,攪乱剤あるいは無能力化剤と呼ばれ,致死剤 (Gガス) などとは区別されて,窒息性ガス,毒性ガスまたはこれに属するガスの使用を禁止したジュネーブ議定書 (1925) の適用は受けないと考えられている。軍では地下壕にひそむ敵を引出す際などに使用する。暴徒の鎮圧などに警察でも使用。

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世界大百科事典(旧版)内の催涙ガスの言及

【化学兵器】より

…CNは各国警察が暴動規制に,CSはアメリカ軍がベトナム戦争で使用した。ともに催涙ガスと呼ばれ,第1次大戦で使用されたヒ素を含むアダムサイト(DM),ジフェニルクロロアルシン(DC)など嘔吐を起こさせる嘔吐ガスとともに刺激剤である。幻覚などの精神異常を起こさせる精神剤では3‐キヌクリジニルベンジレート(BZ)がアメリカ陸軍に採用されている。…

※「催涙ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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