自由学校(読み)ジユウガッコウ

デジタル大辞泉 「自由学校」の意味・読み・例文・類語

じゆうがっこう〔ジイウガクカウ〕【自由学校】

獅子文六小説。昭和25年(1950)発表。終戦後社会道徳のゆがみを風刺した作品。「とんでもハップン」「ネバー好き」の流行語を生んだ。
渋谷実監督による映画題名。昭和26年(1951)公開。松竹配給
吉村公三郎監督による映画の題名。昭和26年(1951)公開。大映の配給。と同週の公開で話題となる。
[補説]はいずれも原作とする作品。

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改訂新版 世界大百科事典 「自由学校」の意味・わかりやすい解説

自由学校 (じゆうがっこう)

獅子文六長編小説。1950年に《朝日新聞》に連載。戦後の混迷の中で,どの世代も自由な生き方を模索している世相を,いわばおとぎ話風に描いた作品である。南村五百助(いおすけ)は良家の出身で,西郷隆盛を思わせる風貌に似合わず気が弱い。妻の駒子は気が強く,女権に目覚めたばかりで,家計の半ばを支えている。駒子は,会社をやめた夫を単なる怠け者と誤認して家から追いだし,恋愛のまねごとを始める。五百助は〈お金の水橋〉下に住むバタ屋の生活共同体に仲間入りし,性に合った暮しを楽しむ。しかし,五百助が密輸事件にまきこまれたのをきっかけに,結局駒子が折れて五百助は家に戻り,駒子は会社づとめ,五百助は家事を受けもつ暮しが始まる。〈とんでもハップン〉など流行語を連発する戦後世代,バカ囃子に興ずる老世代,社会転覆を謀る旧軍人なども登場し,錯綜した戦後の現実を照らし出す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由学校」の意味・わかりやすい解説

自由学校
じゆうがっこう

獅子文六(ししぶんろく)の長編小説。1950年(昭和25)5月から12月まで『朝日新聞』に連載。51年朝日新聞社刊。有能で活動的な妻駒子(こまこ)に支配されていたでくの坊の南村五百助(いおすけ)は、「自由が欲しく」なって会社を辞め、妻にも追い出されてばた屋小屋に住み着く。妻も何人かの男と浮気心をおこすが、結局は夫が恋しくなり、夫も密輸団事件に絡んでわが家に連れ戻された。妻がまた服従を強いるので家を出ようとすると、「ごめんなさい。敗けたわ……家にゐて!」と泣きつくという物語で、敗戦直後の自由主義や男女同権思想を、戦後風俗を巧みに取り入れながら痛烈に風刺したユーモア小説である。「とんでもはっぷん」などの流行語を生み、松竹と大映の2社によって競作映画化されるなど大きな反響をよんだ。

[都築久義]

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デジタル大辞泉プラス 「自由学校」の解説

自由学校〔松竹〕

1951年公開の日本映画。監督:渋谷実、原作:獅子文六、脚色:斎藤良輔、撮影:長岡博之、美術:浜田辰雄、音楽:伊福部昭。出演:佐分利信、高峰三枝子、三津田健、田村秋子、淡島千景、杉村春子、佐田啓二ほか。第6回毎日映画コンクール女優助演賞(田村秋子)受賞。松竹の配給で映画化、同年公開の大映の配給の作品(監督:吉村公三郎)もある。

自由学校〔大映〕

1951年公開の日本映画。監督:吉村公三郎、原作:獅子文六、脚本:新藤兼人、撮影:中井朝一、美術:今井高一。出演:小野文春、木暮実千代、京マチ子、大泉滉、徳川夢声、英百合子、山口勇ほか。大映の配給で映画化、同年公開の松竹の配給の作品(監督:渋谷実)もある。

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