元永定正(読み)もとながさだまさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「元永定正」の意味・わかりやすい解説

元永定正
もとながさだまさ
(1922―2011)

洋画家三重県上野市(現、伊賀市)生まれ。1955年(昭和30)具体美術協会会員となり吉原治良(じろう)に師事、1971年退会まで具体展に出品。具体展では、抽象絵画とともに、さまざまな工業素材を用いて仮設的な立体作品を手がけたり、イベント的な作品を発表。1958年ごろからはアンフォルメルに影響され、絵の具飛散や流れを生かした絵画を制作。1958年「新しい絵画世界展――アンフォルメルと具体」に出品、翌1959年トリノのプレミオ・リソーネ展で受賞。1966年現代日本美術展で二度目の優秀賞を受け、渡米してニューヨークに滞在、翌1967年ヨーロッパを巡遊して帰国。激しい抽象表現主義から簡潔でユーモラスな作風に移る。また、1970年の万博美術展では、お祭り広場の夜のイベントを演出するなど幅広い活躍をみせる。翌1971年現代日本美術展で京都国立近代美術館買上賞を受賞。その後も1983年美術文化振興協会賞や日本芸術大賞を受賞。また、同年ソウル国際版画ビエンナーレ展で大賞を受けるなど、版画作品も旺盛(おうせい)に制作する。1991年(平成3)自ら手がけた絵本が絵本にっぽん賞を受賞。1993年ベネチア・ビエンナーレ出品。1996年成安造形大学教授となる。1991年三重県立美術館で、2002年西宮市大谷記念美術館で個展開催

[小倉忠夫・柳沢秀行 2017年1月19日]

『榊莫山・元永定正著『天風浪々――絵と書の対話』(1984・美術公論社)』『『ころころころ』(1984・福音館書店)』『『がちゃがちゃどんどん』(1990・福音館書店)』『『元永定正作品集』(1991・博進堂出版部)』『『ぱぴぷぺぽ――いろながれかたちうごいて』(1999・光村教育図書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「元永定正」の解説

元永定正 もとなが-さだまさ

1922-2011 昭和後期-平成時代の洋画家。
大正11年11月26日生まれ。昭和30年具体美術協会会員となり,吉原治良に師事。58年日本芸術大賞。アンフォルメル作家として注目される。近年は独自の色彩によるユーモア,ときにエロチック感覚の作品を発表。「もけらもけら」(山下洋輔文)など絵本も手がける。平成19年絵本の原画「いろ いきてる!」で東郷青児美術館大賞。平成23年10月3日死去。88歳。三重県出身。上野商業卒。作品に「作品66―1」「ZZZZZ」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「元永定正」の意味・わかりやすい解説

元永定正【もとながさだまさ】

美術家。三重県生れ。上野商業学校卒。浜辺万吉に絵を学ぶ。1955年具体美術協会会員となる。1968年の第20回まで出品。初期にはビニル絵具を入れて吊り下げるインスタレーション等を行う。1950年代後半より抽象絵画を中心に展開し,1960年代から丸みをもったシンプルな形と鮮やかな色調の作品を発表。ユーモラスな感覚に特徴がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android