児童図書館(読み)じどうとしょかん

改訂新版 世界大百科事典 「児童図書館」の意味・わかりやすい解説

児童図書館 (じどうとしょかん)

主として幼児児童対象とした公共図書館。設置形態には独立のものと公共図書館の一部に併置されたものとがある。後者はふつう児童室,子ども室,児童コーナーなどともよばれている。子どもが自由に好きな本を選び,読書の楽しさを味わうことによって,自然に読書習慣が身につくよう成人とは別にいろいろな配慮がなされている。すなわち,進んで入館したくなるような明るくてくつろいだ雰囲気づくり,幅広く変化に富んだ資料構成,地域社会と子どもについての配慮,また児童の図書について十分研究している専門的職員配備などである。とりわけ職員の働きはこのサービスの中心で,良書の選択・収集,適書の提供,いろいろな催しの企画・実行などを行う。

 児童図書館は1803年アメリカのボストンで,教師であり本屋でもあったビンガムCaleb Binghamが,生地コネティカット州ソールズベリーで150冊の本を基礎に開いたのが最初であるといわれている。その後も,同様な善意の人々が各地で開館したが,当時は日曜学校など宗教慈善団体が子どもに本を提供していた程度であまり発展をみなかった。しかし〈児童の世紀〉といわれる20世紀に入って,図書館員の努力も加わって急速に発展し,今日では公共図書館サービスのなかで欠くことのできない重要な部門となっている。

 アメリカの影響を受けて,日本でも1903年山口県立図書館が最初に児童室を開き,京都府立図書館,東京市立日比谷図書館などもこれに続いたが,日本では公共図書館を国民教化の機関と性格づけたためにその後あまり発展せず,第2次世界大戦後の1950年代になっても児童室をもつ公共図書館は725館中216館,約30%にすぎなかった。そのため心ある人々は家庭文庫,地域文庫を各地で開設した。しかし個人や民間の力では限度があることを自覚するにいたり,これら地域文庫は地方自治体に児童図書館および児童室の設置を要求,いわゆる〈図書館づくりの住民運動〉として全国的に展開された。その結果,今日では2363館中1937館,約82%が児童室を開くようになった(1996現在)。
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図書館情報学用語辞典 第5版 「児童図書館」の解説

児童図書館

公共図書館の児童サービスが行われる部門を指すほか,児童室や児童コーナー,児童専門の独立図書館を含む総称.第一義的には,子どもと資料との出会いの場であり,子どもの知る自由を資料提供によって保障する機関である.貸出サービスやレファレンスサービスとともに,お話し会などが行われる.主なサービス対象は乳幼児から小学生,中学生までの児童である.第二に,児童図書を読みたい成人(ヤングアダルトを含む),子どもの読書や児童図書館について調査や研究を行う成人へのサービスをも行う.この場合の主な対象は,児童図書愛好者,子ども文庫や親子読書会の世話人,児童文学や児童図書館学を学ぶ学生,研究者,児童図書の作家や画家,児童図書編集者などとなる.

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百科事典マイペディア 「児童図書館」の意味・わかりやすい解説

児童図書館【じどうとしょかん】

公共図書館活動の一環として,特に児童だけを対象とした読書施設。児童の生活圏に接近して独立した建物のある場合と,公共図書館の一室を児童室とする場合がある。19世紀以来米国で発達。日本では1903年山口県立図書館が児童室を開設したのが最初であり,現在約82%の公共図書館が児童室(コーナー)をもっている(1996年)。→学校図書館国際子ども図書館

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