日本大百科全書(ニッポニカ) 「公務員選定罷免権」の意味・わかりやすい解説
公務員選定罷免権
こうむいんせんていひめんけん
ある人を公務員に選定してその地位につかせ、また公務員を罷免してその地位を奪うことのできる権能。旧憲法のもとでは、官吏の任免は天皇の大権事項とされていた(大日本帝国憲法10条)が、国民主権を根本のたてまえとする現行憲法では、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」(日本国憲法15条1項)とし、あらゆる公務員の選定罷免権が、終局的には主権者たる国民にあることを表明している。ただし、すべての公務員を国民が直接に選定し罷免すべきだという意味ではない。憲法上、公務員が直接に国民によって選定罷免されるものと定められているのは、選任については、国会議員(43条)、地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員(93条2項)の場合、また罷免については、国民審査による最高裁判所の裁判官(79条2項・3項)の場合のみである。なお、内閣総理大臣や国務大臣の選定罷免、最高裁判所裁判官の選定などは、直接国民の権限ではなく、憲法上それぞれ選定罷免権者が定められている。憲法上その選定罷免方法が定められていないその他の公務員については、その選定罷免方法は法律によってそれぞれ定められる。その場合、特定の公務員の選定罷免に関して、これを直接に国民(住民)が行うものと定めることも、もとより可能である。たとえば、地方自治法には、地方公共団体の長、その他の役員(副知事・副市町村長など)や議会の議員に対する住民からの解職請求の制度が定められており、またその議会に対しては住民による解散請求の制度が定められている。
[真柄久雄]