家庭医学館 「円板状エリテマトーデス」の解説
えんばんじょうえりてまとーですでぃーえるいー【円板状エリテマトーデス(DLE) Discoid Lupus Erythematosus】
全身性エリテマトーデス(「全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡)」)にみられる特徴的な皮疹(ひしん)の1つであるディスコイド疹(しん)(円板状皮疹(えんばんじょうひしん))を主症状とする病気です。発熱、痛みのほかには、全身性の症状をともないません。
円板状エリテマトーデスと全身性エリテマトーデスの罹病率(りびょうりつ)は1対7で、円板状エリテマトーデスをおこす比率は高くありません。全身性エリテマトーデスに比較すると、女性がこの病気にかかる率は少なく、かかる年齢も若くなっています。
この病気の患者さんの5%ほどは全身性エリテマトーデスに移行します。
[原因]
原因はよくわかっていません。しかし、皮膚の表皮(ひょうひ)と真皮(しんぴ)の境に、免疫の主役とわき役ともいうべき抗体(こうたい)と補体(ほたい)が沈着することがわかっています。このことから、全身性エリテマトーデスと同じように、免疫の異常により、皮膚に炎症が生じると考えられています。
[症状]
円板状エリテマトーデスにみられる発疹(ほっしん)は、平らか、やや隆起した円形の紅斑(こうはん)で、コインのようであるため、ディスコイド疹と呼ばれます。ディスコイド疹の中心部は萎縮(いしゅく)して色素がぬけ、あと(瘢痕(はんこん))が残ります。
この発疹は、顔、頭、耳、前胸部、くび、四肢(しし)(手足)の伸ばす側によく出ます。頭に持続してできると、毛がぬけ、あと(瘢痕)が残ることがあります。
発熱や痛み以外には、生命をおびやかすような内臓病変はともないません。
[検査と診断]
血液沈降速度(けつえきちんこうそくど)(血沈(けっちん))の亢進(こうしん)、抗核抗体(こうかくこうたい)(自分の細胞の核を攻撃する抗体)陽性、白血球(はっけっきゅう)減少がみられます。
しかし、全身性エリテマトーデスに特徴的にみられる抗核抗体(DNA抗体)はみられないことが多く、DNA抗体をもつ患者さんは、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。また、リン脂質に対する抗体が陽性であることもあります。
[治療]
あと(瘢痕)が残った円板状皮疹を治すことはできませんが、新しい発疹は、少量のステロイド薬(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬)の使用が有効です。
外国では抗マラリア薬が用いられますが、日本では副作用のために使用が禁止されていますので、抗菌薬のサラゾスルファピリジンや免疫抑制薬のミゾリビンが試みられています。
また、皮膚にぬる薬としては、ステロイド軟膏(なんこう)が有効です。
[日常生活の注意]
皮膚を紫外線から守り、ストレスを避け、心身ともに外傷を受けないようにします。適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
発熱や感染を思わせる症状が出た場合には、ただちに主治医に連絡して、診察を受けてください。