冷や麦 (ひやむぎ)
めん類の一種。小麦粉を原料としうどんと同じ工程でつくられるが,うどんより細い。機械打ちの乾めんが市販されている。室町時代から行われていた切麦(きりむぎ)は,季節により冷温に分けて調理し,冷めんに〈冷麦(ひやむぎ)〉,温めんに〈熱麦(あつむぎ)〉のほか〈湯麦(ゆむぎ)〉〈蒸麦(むしむぎ)〉,その中間に〈温麦(ぬるむぎ)〉があった。しかし,熱麦などの温めんは廃れ,冷や麦だけが現在まで続いている。いまはおもに冷やして氷を浮かせたりするが,昔はアオギリの葉を搔敷(かいしき)にして盛りつけ,葉もとの方からはしをつけるなどの作法もあった。ふつう濃いめのつけ汁に溶きガラシ,刻みネギ,シソなどの薬味を添えるが,野菜や果物を上置きして彩りにし,ゴマみそ仕立ての冷や汁で食べる味は格別である。なお《蔭涼軒日録》の永享10年(1438)4月14日のくだりに,この日から初めて冷めんを調理したとあるが,《多聞院日記》をみると,3月から8月の間に供されていた。
執筆者:新島 繁
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冷や麦
ひやむぎ
乾麺(かんめん)の一種で、小麦粉のみを原料とし、うどんよりは細く、そうめんよりは太いものをいう。JAS(ジャス)(日本農林規格)の規定では、角棒状のものでは長径を1.3ミリメートル以上1.7ミリメートル未満、短径を1.0ミリメートル以上1.3ミリメートル未満のもの、丸棒状の手延ベのものでは直径が1.3ミリメートル以上1.7ミリメートル未満のもので、小麦粉を原料とすることになっている。歴史的には、室町時代末期ごろにできたようだが、当時は手で延ばしてつくるそうめんに対して切麦(きりむぎ)とよばれ、冷やして食べるものを冷麦(ひやむぎ)とよんだ。乾麺をゆでて冷水にさらし、氷片とともに鉢に入れ、つけ汁とネギなどの薬味で食べるのが通常である。水に浮かすため、かなり腰が強く、吸水量が多くなっても切れにくいうえ、口あたりのよいものがおいしく感じられる。そのため、使用の小麦粉は、タンパク質含量が高く、弾力の強い生地(きじ)ができるものを選ぶ。作り方は、うどんとほぼ同じである。
[河野友美・山口米子]
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冷や麦【ひやむぎ】
うどんの一種。通常はうどんより細めに作る。室町時代,うどんより細いめんを切麦(きりむぎ)といい,熱くして食べるのを熱麦,冷たいのを冷や麦と称した。このうち冷や麦が現在まで続いている。多くは乾燥品で,ゆでてから水にさらし,氷片を浮かした冷水に入れて供する。つけ汁にワサビ,ネギなどを添える。
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ひやむぎ【冷や麦】
小麦粉を塩水で練って薄くのばし、細く切った麺。うどんよりも細いものをいう。ゆでて水にさらして締め、つけ汁につけて食べる、夏の食品。
出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の冷や麦の言及
【うどん(饂飩)】より
…近世に饂飩といったのは中国の切麵(せつめん)で,日本の切麦(きりむぎ)にあたる。切麦はうどんより細く切るのが特徴で,熱くしたものを熱麦(あつむぎ),冷やしたものを冷や麦といい,そうめんと同じく[点心]のほか饗膳(きようぜん)の後段(ごだん)にも供された。語源の推移から餛飩を饂飩の元祖だとする説が根強いが,手法と形からみて,むしろ餺飥(はくたく)(音便ほうとう)がうどんの祖型である。…
【めん類(麵類)】より
…うどん,そばなどのように小麦粉,そば粉などをこねて細長い線条に切った食品の総称。中国ではもともと〈麵〉は小麦粉のことで,小麦粉を水その他でこねたものは〈餅(へい)〉と呼ばれた。ヨーロッパで[パスタ],ペースト,などと呼ぶのが餅に相当する。その餅は加熱のしかたによって,蒸したものを蒸餅(じようへい),焼いたものを焼餅(しようへい),ゆでるのを湯餅(とうへい),油で揚げるのを油餅(ゆへい)といった。この中の湯餅が現在のめん類の祖先で,唐代にはその一種にこね粉を平たく打って刻んだ剪刀麵(せんとうめん)があり,宋代にはそうした刻んだものを切麵(せつめん),略して単に〈麵〉と呼び,蒸餅,焼餅,油餅を総称した〈餅〉と対置されるまでになった。…
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