分封(読み)ブンポウ(その他表記)swarming

翻訳|swarming

デジタル大辞泉 「分封」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐ぽう【分封】

[名](スル)
領地を分け与えて支配させること。また、その領地。「家臣所領分封する」
越冬したミツバチ女王バチが、初夏ころ、新女王バチに巣を譲って働きバチの一部とともに他に移り、新しい巣を作ること。巣分かれ。分房。分蜂ぶんぽう

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精選版 日本国語大辞典 「分封」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐ぽう【分封】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 封地を分け与えること。王者が諸侯に領地を与えて支配させること。また、その分け与えられた領地。
    1. [初出の実例]「諸侯の封土は、三十万石に限り、其余地は子弟に分封すべき事」(出典:公議所日誌‐一二・明治二年(1869)五月)
  3. 春から夏に、ミツバチの女王バチが新女王に巣をゆずりわたし、働きバチの一部とともに他に移って、新しい巣をつくること。分房。

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改訂新版 世界大百科事典 「分封」の意味・わかりやすい解説

分封 (ぶんぽう)
swarming

ミツバチの巣分かれのこと。他の動物の場合における個体増殖を意味するが,1匹ずつ分かれるのではなく,女王バチを中心として群のまま分かれる。春の流みつ期の中・後期になると,巣の中はみつと花粉とミツバチであふれるようになる。すると働きバチたちは,巣の中に数個の王台(女王バチになるべき幼虫を育成する房)を構築し,若い女王バチを育成し始める。本来ならば女王バチの育成は1匹で足りるはずであるが,群の勢いが強いほど,たくさんの王台が準備されるようである。最初の新しい女王バチが羽化して出房する4~5日から7日くらい前に分封する。半数ちかい働きバチは分封熱にあおられ興奮して,みつの貯蔵房に群がってみつを吸いこみ,みつ囊をいっぱいに満たして騒乱状態で飛び立つ。空中を乱舞しながら進み,巣のちかくの木の枝などに後続の女王バチを中心に蜂塊(ほうかい)となって群がり集まる。この分封群が最初の場所にとどまるのは,普通数十分から数時間程度であり,この間偵察バチは新しい住所を探し求めて四方に飛び回っている。新しい住いは木の空洞とか,からになった巣箱,ときに人家の戸袋であったりすることもある。やがて新しい住いが見つかると,その場所が明確にハチ群に伝達され,女王バチを伴って飛び去っていく。この一時的にとどまっているときに,からの巣箱にハチ群を収容すると,それは完全な1群を構成することになる。残された古巣にはやがて新女王バチが誕生するが,羽化1週間後,新女王バチは結婚のため巣から飛び立ち,後続した雄バチと交尾する。さらに次々となん匹かの雄バチと交わると考えられているが,このことを確実に見た者はいない。巣に戻った新女王バチはやがて産卵を始める。さらに続いて分封したいときには,次の新女王バチの出房前に,残りの半数ちかいハチ群を伴って分封する(第2分封)。養蜂家はこの習性を利用して,ハチ群数を増やしたり減らしたりするが,自然分封を繰り返すとハチ群が劣勢になる。ミツバチ社会では1群に2女王バチの存在が許されないことが原則である。
ミツバチ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「分封」の意味・わかりやすい解説

分封
ぶんぽう

昆虫類のミツバチにみられる巣分れのことをいい、「分蜂(ぶんぽう)」とも書く。ミツバチの巣内の個体が過剰になると、女王の出す抑制物質が行き渡らなくなり、王台が形成され、新しい女王が誕生する。その前後に、前からの女王は巣内の約半数の働きバチとともに巣を出る。これが分封である。巣を離れたハチは近くの木の枝などに女王を中心とした集団、蜂球(ほうきゅう)をつくるが、好適な営巣場所を探しに出た斥候のハチが蜂球に戻って、みつけた場所の距離と方向を指示するダンスをし、やがて移動がおこる。巣に残った新しい女王は雄とともに結婚飛行を行い、交尾後巣に戻る。ときに、さらに新しい女王が同じ時期に生まれるが、この場合、第二の分封が未婚のこの女王と働きバチによっておこる。

[中根猛彦]

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普及版 字通 「分封」の読み・字形・画数・意味

【分封】ぶんぼう

諸侯とする。封建。〔史記、夏本紀〕禹は姓(じせい)爲(た)り。其の後封せられ、國を用(もつ)て姓と爲す。故に夏后氏・氏~り。

字通「分」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「分封」の意味・わかりやすい解説

分封【ぶんぽう】

ミツバチの巣分れのこと。新女王バチの羽化の前日ごろに親の女王バチが群れの半数近くの働きバチとともに旧巣を去る現象。働きバチの誘導によって起こり,多数の働きバチは空中を乱飛したのち木の枝などにかたまる。分封群は他の生活適地へ再移動し,そこで営巣をする。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分封」の意味・わかりやすい解説

分封
ぶんぽう
swarming

ミツバチが新しい巣を形成すること。巣分れ。春に女王が産んだ卵から,初夏の頃新女王が生れてくると,旧女王は分封行動を起す。旧女王は約半数の職蜂 (働きばち) を連れて巣を出て,女王を中心にして固まり合った蜂球をつくり,木の枝などで休止したのち,新しい巣づくりを始める。新女王が2匹以上生れてきたときにも分封が起る。

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世界大百科事典(旧版)内の分封の言及

【社会性昆虫】より

…コロニー自体の増殖は,女王(シロアリでは女王と王)が限られた時期にうみ出す次代の女王による新コロニー創設によってなされる。多くの種類では新女王が単独創設するが,複数女王による共同創設や,新女王と多数のワーカーでの集団創設(いわゆる分封swarming)の場合などがある。ミツバチも分封型だが,唯一の例外として母女王が一部のワーカーとともに離巣し,娘女王が残ったワーカーと旧巣をひきつぐ。…

【社会性昆虫】より

…コロニー自体の増殖は,女王(シロアリでは女王と王)が限られた時期にうみ出す次代の女王による新コロニー創設によってなされる。多くの種類では新女王が単独創設するが,複数女王による共同創設や,新女王と多数のワーカーでの集団創設(いわゆる分封swarming)の場合などがある。ミツバチも分封型だが,唯一の例外として母女王が一部のワーカーとともに離巣し,娘女王が残ったワーカーと旧巣をひきつぐ。…

【群れ】より

…永続的な群れは,社会性昆虫,高等哺乳類とくに霊長類等,なんらかの手段による構成個体間の相互認知に基づいて保たれている群れで,それぞれの種に固有な群れの構成と,その構成を保つための独自の維持機構を備えている。ミツバチの分封swarmingやニホンザルの群れなどにみられる群れの分裂group fissionなどは,群れの維持機構を示す現象とみなすことができる。またハイイロガンやコクマルガラスなどのつがいは,配偶者のいずれかが死ぬまで安定した配偶関係を保っていることが知られているが,これも永続的な群れの例に数えることができよう。…

※「分封」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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