日本大百科全書(ニッポニカ) 「分権管理」の意味・わかりやすい解説
分権管理
ぶんけんかんり
decentralized management
経営管理方式のうち、意思決定の権限を相対的に下層に分散するものをいう。これと対照的に、意思決定の権限を相対的に上層に集中するものを集権管理という。集権と分権の区分はあくまで相対的なものであり、すべての権限を上層部に集中すれば分業は成立せず、逆にすべての権限を下層部に分散すれば組織は解体に陥る。大規模化した組織で集権管理を行うと、意思決定と執行が疎遠になって敏速性を欠くようになり、コミュニケーションが悪化し、構成員の意欲が低下するなど、官僚制的硬直が生まれる。そこで、一方では大規模経営の経済的優位性を確保しながら、他方で機動性と活力を高めるために、分権管理が採用される。具体的には、全体的・基本的・戦略的意思決定のみを上層部に留保し、執行的・常規的・戦術的意思決定を可能な限り下層部へ分散するようにする。そのためには、(1)自主独立性を与える分権管理組織、(2)分権管理組織ごとに業績を計算する内部損益計算制度、(3)各分権管理組織に目標を与えながら全体を一定方向に統合する中枢組織が必要である。(1)のためには、特定の製品もしくは市場を編成基準とする製品別もしくは地域別部門組織がもっとも適合している。(2)は独立採算制であり、部門間のサービスや財の授受は社内取引とする。(3)は戦略問題に専念する本社である。これらすべてを取り込んだシステムが本来の事業部制であり、日本ではカンパニー制(社内分社制)である。
[森本三男]