植物の茎頂と根端の総称。すなわち,茎の先端部にあってその茎の延長部と新しい葉とを作り出す茎頂と,根の先端付近にあってその根の延長部を作り出す根端をいう。いずれもその中心部には細胞分裂を活発に行って新しい細胞を生産する頂端分裂組織がある。茎頂と根端とは植物体の頂端部にある分裂組織であるから生長点とよばれるが,これに対して形成層とコルク形成層は側方部にあるため側部分裂組織とよばれ,生長点とはいわない。茎頂は新しい茎と葉のほかに花を作ることもあり,根端は根を作るのであるから,生長点は茎・葉・根をもつ高等な植物における形態形成の中心的役割をもつ。しかし,生長点という用語が適用される“点”について,顕微鏡による研究が進むに従って,単なる点ではなく多数の細胞からなる部分であることがわかってきた。そのため,19世紀から20世紀へとしだいに生長点という用語を使う研究者は少なくなってきている。そこで生長点にかわる用語として茎頂(またはシュート頂)と根端が使われる。
茎頂はさかんに生長している茎の先端部にも,また休眠している芽の中にもある。1本の茎とその茎のまわりに配列する一つのまとまりを苗条(シュート)というが,ふつう苗条の先端には茎頂があって,その苗条の延長部をつくる。1本の枝は一つの苗条であり,茎頂は枝の伸長に中心的な役割をもつ。しかし茎頂が枯れるなどのため,茎頂がなくなっている枝も多く,このような枝の先端部では伸長が起こらなくなるが,この場合には側芽(腋芽(えきが)),すなわち新しい苗条がつくられて,この苗条の茎頂がもとの苗条の茎頂にかわって活動するようになることが多い。また,もとの苗条の茎頂が活動する一方で,腋芽の茎頂も活動して側枝を伸ばすときは,主軸と側軸からなる枝分れをもつ植物体となる。一つの茎頂が活動して一つの苗条だけが発達して1本の幹だけからなる植物体をつくるシュロ,主軸からたくさんの側枝を出し,たくさんの茎頂が同時に活動して植物体をつくるスギなど,茎頂の活動性の違いから,植物のさまざまな形が導かれている。
根端は根の先端部にあるが,根端のもっとも先端の部分には根冠があり,根の頂端分裂組織は根冠のすぐ上の部分にある。根の頂端分裂組織は根の先端の方向へは根冠の細胞を,そして根の本体の方向へは根の新しい組織となる細胞をつくる。茎頂では茎の部分と,茎のまわりに配列する葉をつくるが,根端では葉のような側生の器官をつくらない。
地中を横の方向にのびる地下茎や地上をはってのびる茎などのような例もあるが,茎頂は一般に重力と反対の方向への生長活動を行うのに対して,根端は一般に重力の方向に向かって植物体を延ばす活動を行う。このような生長に関連しては,生長ホルモンであるオーキシンの役割が大きいといわれている。
執筆者:原 襄
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