日本大百科全書(ニッポニカ) 「列異伝」の意味・わかりやすい解説
列異伝
れついでん
中国、魏(ぎ)代の説話集。『隋(ずい)書』経籍志によれば、三巻、魏の文帝曹丕(そうひ)(187―226)の著とされるが、晋(しん)の張華の著とする説もある。現存する『列異伝』の話のなかには曹丕の死後の事件の記録がみえるが、張華の著とする積極的な根拠もない。曹丕の著とすれば、三国・六朝(りくちょう)時代に流行した志怪(しかい)書の先駆ということになるし、また、天子の位についた者が、志怪書の作者として伝えられることも注目に値する。完本は伝わらず、魯迅(ろじん)が『古小説鉤沈(こしょうせつこうちん)』のなかに五十余条を収集。そこには、現世と幽界、人間と幽鬼の交渉、金銀や古い道具の精怪の起こす怪異など、初期の志怪書特有の説話や挿話が多くみえる。
[竹田 晃]