初期独占(読み)しょきどくせん(英語表記)early monopoly

改訂新版 世界大百科事典 「初期独占」の意味・わかりやすい解説

初期独占 (しょきどくせん)
early monopoly

経済学でいう独占資本主義の高度な発達の結果19世紀末以降先進諸国で形成されたが,限られた市場で収益の機会を独占しようという試みはずっと古くからあった。特に資本主義の発達の初期に当たる絶対王政期には,産業資本の競争に対して営利機会の独占を図る旧型の政商資本と新財源を求める王権利害とが一致して,多数の独占が形成された。これが初期独占で,生産の集積と集中という最新型の産業独占に対して本質的に買占的独占であり,多数の小生産者に対する商業資本支配という商業独占である。初期独占は多額の資本を必要とする外国貿易や特産物の卸商業,鉱山・冶金業,外国から移植された新産業などの分野で,上納金や貸付けと引きかえに種々の特権を与えられて形成された。その代表的な例としては,16世紀以来イギリス毛織物のアントウェルペンアントワープ輸出を規制していたマーチャント・アドベンチャラーズや15世紀末ベネチアの銅市場支配をめざして結ばれた南ドイツ商人による〈銅販売カルテル〉のような初期カルテル,先駆会社が合同して生まれたオランダ東インド会社やフランスの西インド会社のような初期トラスト,多数の支店傘下の企業を中央の同族会社が統括した南ドイツの財閥フッガー家のような初期コンツェルンなどがある。市民革命期には王室政商議会や中小生産者との間で初期独占の存廃が争われ,これを倒して産業の自由を実現したところに近代の経済的自由主義の起源が求められる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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