血縁関係を有する一族(厳密にいえば,個人あるいは家族,親族,使用人といった特殊の関係にある者)で所有し,経営する会社。どの程度の株式所有で同族会社といえるか明確な定義はないが,一般的にいって50%以上が基準といえよう。個人が主として自己の資金によって新規に企業を設立しみずから経営するというのが,中小企業の誕生する一般的な形態である。この場合,企業の所有者が経営者であり,通常の大企業のようには,〈所有と経営の分離〉がなされていない。そして,企業規模の拡大の有無にかかわらず,所有者の一族が経営を維持しつづけ,代表者も世襲によって交代する。中小企業の多くは同族会社であるが,一般に企業規模が拡大するにつれて組織的運営が不可避になり,専門的経営者が必要になる。また,資金調達のうえからも株式を公開したほうが圧倒的に有利であることから,しだいに所有と経営が分離し,同族会社的色彩が希薄になる。とくに創業者利潤(企業の創業者が手にする,当該会社の株式の額面価額ないし払込資本と株式市場における時価との差額であるプレミアム)を得ようと欲する経営者は,積極的に株式を公開する。しかし企業規模が拡大しても,意思決定について第三者の介入を避け,独自の経営方針を貫くために株式を公開せず,同族会社の形態を維持する企業もみられる。一般に中堅企業の段階までは同族会社的性格を残しているが,組織的運営に依存する大企業に飛躍する時点で同族性を離脱する。しかし,所有者の一族から専門的経営者としての資質を有する者が登場し,大企業になっても依然として同族会社であるといった例も少数ながらみられる。日本では,サントリー,吉田工業(1994年ワイケイケイ(YKK)に改称),竹中工務店などがその代表例である。また中堅規模にとどまり,老舗として独自の伝統的性格を維持する同族会社は少なくない。同族会社には,所有者の決断でリスクを負って独自の事業を展開しうるという長所もあるが,反面,他人の血を入れず閉鎖的・硬直的・独善的で発展性に欠けやすいという短所もある。老舗の同族会社が経済変動に適応できず,伝統的な経営を維持したために倒産に追い込まれる事例はしばしばみられる。
執筆者:清成 忠男
法人税法上,同族会社とは,3人以下の株主等およびこれと特殊の関係のある個人・法人の有する株式総数または出資金額の合計額が,その会社の発行済株式の総数または出資金額の50%以上である会社をいう(法人税法2条10号)。経済学にいう同族会社には,大企業も含まれる場合があるのに対して,税法上の同族会社は一般に小規模であり,経営の実態も個人事業主と異ならないものが多い。
同族会社は,一般に少数の株主等により支配されているため,株主等が利益を内部に留保し,あるいは取引や経理を操作して自己の所得税負担などを軽減することが可能である。そこで法人税法は,次のような対策を講じている。第1に,同族会社の各事業年度の留保金額のうち,法人税法の定める留保控除額を超える部分に対しては,10%から20%の超過累進税率よりなる留保金課税がなされる(67条)。第2に,税務署長は,その法人の行為や計算で,それを認容した場合には法人税・所得税等の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,租税回避を防止し,課税の公平を図るためにそれを否認し,正常な行為や計算に引き直して更正・決定することができることになっている(法人税法132条1項1号。地方税法72条の43も,同族会社の事業税につきほぼ同旨の定めをなしている)。
執筆者:畠山 武道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
親族や使用人のような特殊な関係がある者だけで構成されている会社。人的会社のほか、株式会社についても、社会的信用や危険負担の制限などの利点を考慮して、この同族会社の形を利用する場合が多い。これは商法上の用語としてはないが、税法上は法律用語となっており、会社の一定数(3人以下)の株主または社員、およびこれらと政令で定める特殊の関係のある個人および法人(同族関係者)が有する株式の総数または出資金額の合計額が、その会社の発行済株式の総数または出資金額の一定割合(100分の50)を超える会社をいうと定めている(法人税法2条10号)。同族会社では、同族関係者の会社支配により、容易に同族関係者の租税負担の軽減を図るおそれがあるので、税法上、たとえば一定額を超える内部留保について特別の課税を行うというように、特別の取扱いがなされている。
[戸田修三・福原紀彦]
『酒井正之・緑川正博著『同族会社の法律と税務』新版(2004・新日本法規出版)』▽『日本税理士会連合会編、川村文彦・武田茂著『同族会社――税務処理・申告・調査対策』第5版(2008・中央経済社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)シクミカ:運営「会計用語キーワード辞典」会計用語キーワード辞典について 情報
…しかし現在の日本では,小規模な企業が株式会社形態をとってはならないという規制はないので,相当零細な企業まで株式会社となっている。こうした小規模な株式会社は,通常,家族・親族等だけですべての株主・取締役・監査役の地位が占められていることから,同族会社とか閉鎖的株式会社とか呼ばれる。これらの株式会社は,商法による複雑な法規制を遵守できるような法律知識も,またそれができる資力もない。…
…日本では,合名会社の商号中に社員の名称を加える必要はなく,また実質規定もドイツ法に依拠しているが,名称はフランス法によったのである。 以上のように,沿革的には合名会社は資本的結合であるよりむしろ家族的結合であったが,現在でも,少数の人的信頼関係にある者の共同企業形態であって,個人商人が確実な協力者を必要とするときや,数人の親族が共同して事業を行うときなどのように,資本の結合というより労力の補充を目的とするいわゆる同族会社である場合が多く,合名会社は中小規模の企業のための企業形態として機能している。日本には,税務統計上1万社足らずの合名会社があるにすぎない。…
※「同族会社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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