コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

前登志夫 まえ としお

2件 の用語解説(前登志夫の意味・用語解説を検索)

デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

前登志夫 まえ-としお

1926-2008 昭和後期-平成時代の歌人。
大正15年1月1日生まれ。詩人として出発したが,昭和30年前川佐美雄に入門し短歌に転じる。郷里の奈良県吉野で林業をいとなむかたわら,自然を背景とした土俗的な歌をつくりつづけた。43年から「山繭の会」を主宰。53年「縄文紀」で迢空(ちょうくう)賞。平成10年「青童子」で読売文学賞。17年「鳥總立(とぶさだて)」で毎日芸術賞,長年にわたる短歌の業績で芸術院恩賜賞。同年芸術院会員。平成20年4月5日死去。82歳。同志社大中退。本名は登志晃。評論に「山河慟哭」など。

出典|講談社 この辞書の凡例を見る
(C)Kodansha 2015.
書籍版「講談社 日本人名大辞典」をベースに、項目の追加・修正を加えたデジタルコンテンツです。この内容は2015年9月に更新作業を行った時点での情報です。時間の経過に伴い内容が異なっている場合がございます。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

前登志夫
まえとしお
(1926―2008)

歌人。奈良県生まれ。同志社大学中退。詩人として出発し、安騎野(あきの)志郎の筆名で詩集『宇宙駅』(1956)を刊行した。一方、1951年(昭和26)前川佐美雄(さみお)を知って短歌に打ち込むようになった。1964年、第一歌集『子午(しご)線の繭(まゆ)』を刊行。おりから興隆期を迎えていた前衛短歌運動を牽引(けんいん)する有力な一人として、独自な位置を占めた。「暗道のわれの歩みにまつはれる蛍ありわれはいかなる河か」等、自身の存在の根拠を問う独自な世界は、第二歌集『霊異記』(1972)でいっそう深められ、さらに風土への傾斜、世界観としてのアニミズム(原始的信仰)を意識化し、吉野山中に居を構え、林業で生活の資を得つつ、自然のなかに山河慟哭(どうこく)の声を聞き、古代信仰の世界と交信する、特異な詠風を確立していった。「さくら咲くその花影の水に研ぐ夢やはらかし朝(あした)の斧(おの)は」は『霊異記』の代表作として知られている。1967年にエッセイ集『吉野紀行』を書き下ろし、吉野の風土・歴史に深くふれたことも、前記の詠風の確立を支えた。1977年、第三歌集『縄文紀(じょうもんき)』により第12回迢空(ちょうくう)賞を受賞。1980年に歌誌『山繭』を創刊した。1987年、第四歌集『樹下集』により第3回詩歌文学館賞、92年(平成4)、第五歌集『鳥獣虫魚』によって第4回斎藤茂吉短歌文学賞、97年、第六歌集『青童子』により読売文学賞を受賞した。2005年、第八歌集『鳥総立(とぶさだて)』ほかの業績により日本芸術院恩賜賞を受賞、同年日本芸術院会員。その他、エッセイ集に『山河慟哭』(1976)、『存在の秋』(1977)、『吉野日記』(1983)、『木々の声』(1996)などがあり、日本の自然風土を自在に論じて独自のアニミズムや宇宙観を展開した。[佐佐木幸綱]
 かなしみは明るさゆゑにきたりけり一本の樹の翳(かげ)らひにけり
『『子午線の繭』(1964・白玉書房) ▽『霊異記』(1972・白玉書房) ▽『存在の秋』(1977・小沢書店) ▽『前登志夫歌集』(1978・国文社) ▽『前登志夫歌集』(1981・小沢書店) ▽『吉野日記』(1983・角川書店) ▽『吉野紀行』新版(1984・角川書店) ▽『大和の古道』(1985・講談社) ▽『樹下三界』(1986・角川書店) ▽『非在 自選歌集』(1986・短歌新聞社) ▽『樹下集 歌集』(1987・小沢書店) ▽『吉野遊行抄』(1987・角川書店) ▽『吉野鳥雲抄』(1989・角川書店) ▽『森の時間』(1991・新潮社) ▽『山河慟哭』(1991・小沢書店) ▽『吉野風日抄』(1991・角川書店) ▽『鳥獣虫魚 歌集』(1992・小沢書店) ▽『吉野山河抄』(1993・角川書店) ▽『木々の声』(1996・角川書店) ▽『青童子 歌集』(1997・短歌研究社) ▽『明るき寂寥』(2000・岩波書店) ▽『鳥総立』(2003・砂子屋書房) ▽『縄文紀 歌集』(短歌新聞社文庫) ▽岩田正著『現代歌人の世界――作家の顔・作品の力』(1990・本阿弥書店) ▽岡井隆編『感じる歌人たち』(1992・エフエー出版) ▽日高尭子著『山上のコスモロジー 前登志夫論』(1992・砂子屋書房) ▽藤井常世著『鑑賞・現代短歌9 前登志夫』(1993・本阿弥書店) ▽田島邦彦著『現代歌人の世界 前登志夫の歌』(1995・雁書館) ▽白洲正子著『おとこ友達との会話』(1997・新潮社) ▽佐佐木幸綱著、「佐佐木幸綱の世界」刊行委員会編『佐佐木幸綱の世界3 同時代歌人論1』(1998・河出書房新社) ▽広末保著『広末保著作集第12巻 遊行の思想と現代――対談集』(1998・影書房) ▽小林幸子著『子午線の旅人――前登志夫の風景』(2000・ながらみ書房) ▽岩田正著『現代短歌をよみとく――主題がときあかすうたびとの抒情』(2002・本阿弥書店) ▽坂口昌弘著『歌品』(2002・彩図社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

前登志夫の関連キーワード早乙女貢青木和夫浅香鉄心荒川幾男鈴木通夫土屋義彦沼正三藤田利夫藤田広志三好行雄

今日のキーワード

トランスアジア航空

台湾・台北市に本拠を置く航空会社。中国語名は復興航空。1951年、台湾初の民間航空会社として設立。83年に台湾の国産実業グループに経営移管され、組織改編を実施した。92年に国際チャーター便の運航を始め...

続きを読む

コトバンク for iPhone

前登志夫の関連情報