改訂新版 世界大百科事典 「副鼻腔気管支症候群」の意味・わかりやすい解説
副鼻腔気管支症候群 (ふくびこうきかんししょうこうぐん)
sinobronchial syndrome
慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)に持続性の咳,痰を主症状とする慢性の気道炎症性疾患の合併した疾患群の総称。両者の合併頻度はかなり高く,慢性気管支炎,気管支拡張症では40~50%,瀰漫(びまん)性汎細気管支炎では約80%に慢性副鼻腔炎を合併する。一方,副鼻腔炎に持続性の咳や痰が合併するものは5~10%である。両者の合併は古くから上気道と下気道の相関として知られており,1914年トムソンF.H.Thomsonは〈化膿性の副鼻腔炎は頑固な気管支漏の原因となることがある〉と記載し,以来,sinus-chest infection,bronchosinusitis,rhino-tracheo-bronchitis,sinobronchitis,sinopulmonary syndromeなど,さまざまな呼称が用いられてきた。今日,日本の瀰漫性汎細気管支炎がきわめて高率に慢性副鼻腔炎を合併することから,この症候群は再び注目されており,その因果関係の解明が待たれている。多くは副鼻腔炎の発症が先行することから,炎症性物質の下気道吸引といういわゆる下行説が従来いわれてきたが,家族発生もみられるほか最近のHLA抗原の解析などから,遺伝性体質素因の関与が示唆されている。
執筆者:工藤 翔二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報