労働の際に歌われる歌の総称。すべての生産労働の際に歌われる歌で,〈仕事歌〉〈作業歌〉〈労働歌〉ともいう。労作歌は民謡として最も本質的なもので,多くは労働能率を高めるために作業の進行に対する一種の拍子歌として歌われるのが普通である。したがって歌は作業のリズムと合致するが,その作業が本来の拍子音(タクト)を伴わない場合には,人工的な手段として作業に適した掛声を入れる。その掛声を音楽化したものが〈囃子詞(はやしことば)〉で,たいていの労作歌には囃子詞がついている。なお,K.ビュヒャー《労働とリズム》(1896)は,東西古今の作業歌をもとにリズムや歌がいかに労働に作用するかを論じた書として知られる。
労作歌には一般に作業を進める刺激として歌うものと,作業の休養の際に歌うものと2種ある。たとえば田植歌や麦搗歌(むぎつきうた),木挽歌(こびきうた),地搗歌(じつきうた),茶摘歌(ちやつみうた),山歌等は前者に,牛追歌,長持歌,駕籠舁歌(かごかきうた)の類は後者に属する。労作歌の中には酒造歌,木挽歌,油絞り歌,漆搔歌(うるしかきうた)等のように,ある一定の期間だけ雇われる季節労働者が歌う〈季節労作歌〉があり,これは比較的共通する歌が多いが,中には〈酒造歌〉のように作業の工程に従って数種の歌があるものもある。寒天屋歌,木おろし歌,紙漉歌(かみすきうた),茶山歌,藍(あい)こなし歌等も,その作業の手順によって異なる歌が歌われる。また岡山県の花莚(はなむしろ)織歌や奈良県,兵庫県等の素麵(そうめん)掛歌,愛媛県,熊本県の櫨取歌(はぜとりうた),高知県の鰹節造歌(ばらぬきうた),山口・長崎・高知・和歌山県等の鯨歌のように,その地方に発達した特殊な作業歌もある。しかし,これらの労作歌は明治期以来の生産様式の変化,機械化などに伴い,しだいに衰滅しつつある。
→ワーク・ソング
執筆者:浅野 建二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…土搗歌(どつきうた),胴突歌ともいう。労作歌,祝歌(いわいうた)の一種で,家の建築の際などに土台を固めるための地搗き作業に歌われる。地搗き作業は地盤を固める目的のほかに,強力な霊力を土中に搗き込める信仰的な色彩があり,それは地搗きの動作や歌詞の中に残っている。…
…民謡で,機を織るときに歌う労作歌。古くは〈居坐機(いざりばた)(地機(じばた))〉という,女子が尻を地面につけて,チャンカラチャンカラと横糸を通す杼(ひ)を左右にさし入れる機で,家の中で織っていたが,機織歌はおもにそのころの作業歌として歌われた。…
…祭り以外の日常生活では,歌が日々の労働のよき伴侶となった。農耕,漁労,工作等々,いずれもおおぜいの共同作業で行われた昔は,歌が全体を統一し,志気を高め,仕事を促進させた(労作歌)。これは,いわば生産向上の機能で,かつての民族の生活においては,芸能の伝承を通じて人々は日々の生活を心安らかなものとし,かつ技芸の研修を通じて身心の鍛練,知識の充足を果たし,さらに創造意欲を満たしつつ明日に生きる活力を養ったのである。…
…日本の民謡の分類名で,広義には山林原野で歌われる歌を指す。労作歌の一種。山歌はふつう,野山で労働する者が道を行くときに歌う歌で,〈山行歌〉の異称もある。…
※「労作歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新